空腹のグラトニー【アズール・アーシェングロット】

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変な夢を見た。
アズールがベッドに寝転がる俺の頭の両側に手を着いて俺がアズールを見ていると分かると唇を唇で塞がれる。


喉を独特の苦みが通過して思わず顔をしかめる。この味はアズールが毎度渡してくる薬と同じ味。夢の中まで味がするなんて変な話だ。

此方を見下ろす顔が酷く怯えて見えるも気のせいか。ああ、お前のそんな顔を見るのはいつぶりか。



「 どうしたら貴方の心が分かるようになるのか、いつまでたっても分かりませんね」



独り言にしては随分と大きすぎる。質問に答えようと口を開けど言葉は喉で詰まって嗚咽のような音にしかならない。心が分かるようにと言われても、普段から発する言葉は本心だしそれさえ満たされていれば構いやしない。アズールのセリフをそっくりそのまま返してやりたい。

サバナクローの奴らに拉致未遂された後からアズールからやたらと視線を感じ、見つめ返せば即座に逸らされる。牙で付いた傷とは違う謎の痣ができていたから大方、後ろめたい何かを隠していることは事実。




ーーーおまえ、何考えているんだ？




「 ……眠い」

「 酷いクマですよ。明け方までまた冷蔵庫の中でも漁ってたんですか？」

「 いや、変な夢をみただけだ｣



いつものように山積みにされた朝食も食べる気にならず、ただただ夢の中のアズールの表情とセリフが頭から離れない。

チラリと横顔を盗み見ると、いつものように済ました顔で朝食を食べるアズールに、夢の中の姿は結びつかない。



(泣きべそかきそうなツラ、NRC(こ こ)に入ってからは一度も見てねぇんだよなあ……)



「 なあアズール」

「 いい加減食べたらどうなんですか。遅刻しても知りませんよ」

「 俺に何か言いたいことでもあんのか？」



探りを入れるのは趣味じゃないし好きでもない。人の夢の中にまで来て言いたいことがあるなら早く言って欲しいものだ。

暫し、沈黙。
噛み合っていた目線を先に逸らしたのはアズールの方。



「 言いたいことならいつも伝えているつもりですが？
いい加減食べて片付けてください、本当に置いていきますよ」

「 あっそ」



すました顔で隠し通せてますって見せてくるのが心底腹立たしい。

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