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「 アズール。 Aさんはもしかしたら隠し事をしているのかもしれません。飛行術の授業の際サボっていて不在でしたが、戻ってきてからの様子が変なんです。 やたらとチョーカーを気にしているようにも見えました」
ジェイドが僕に言っていたのはコレか。
急に息苦しくなって、呼吸の仕方を忘れたような感覚に似ている。頭に血が上るというのはこの事か、と。今日の彼女はいつもと何処かが違う。呆然と海を眺めて大好きな食事さえもしない。 何時から変だったのか、ああそうだ……今日、サバナクローの方達とのあの後から妙に大人しかったな。
犯人達の目的は僕の弱みとなるであろう存在を自分の手に置いておくこと。 だが素直に彼女が首を縦に振るわけが無い。 束縛を嫌い、本来ならば群れで生活する彼女はいつも1人で孤立していたから。人との関わりよりも自分の欲求にだけ正直で素直なのが彼女だ。
気づいて、いないんだろうか。
食べ物をくれる事を好意と受け取るせいか、それ以外のことには本当に疎い。
「 魔法でやった方が速いだろ俺の髪は」
「 後で言うことを聞いてもらう為の貸しを作っているんですよ」
「 性悪」
「 なんとでも」
現にこうして僕がどんな気持ちで居るのかさえ、貴方は興味もない。
一切疑わないし、背後も容易く取らせる。警戒心なんてこれっぽっちもない。 傷を付けた人物が心底腹立たしい上に心底羨ましい妬ましい。
幼馴染というだけで他は何ら繋がりもない僕と彼女は所詮は他人。 淡い泡のようななにかもやがていつか消えなくなってしまう。
痣と牙の跡はマジカルペンを使えばあっという間に消える。
「 アズール重い。寄りかかんな」
すっかり元通りになった首を唇でなぞる。新たな痣が出来てしまうがどうでもいい。彼女は隠そうとしていた牙の跡がたった今僕の手によって治された事すら気がついていない。
「 ……少し、目眩がしただけですよ」
「 だから徹夜すんなって言っただろ」
目眩だなんて、それらしい嘘まで付いて。
十分に乾いた髪を櫛で梳かしてやれば僕の方に身体を預けてうつらうつらとしている。
「 眠いんですか?」
「 んー、眠い……あと、ちょっと……したら」
言葉が途切れて、その代わりに静かな寝息が聞こえてきた。 起きている時を除けば大人しい。
穏やかな寝顔を見せるのは安心しきっているからか。意を決して以前同じ布団で寝た僕の努力を少しは気づいて欲しいものだ。
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愛(プロフ) - 蒼井とーるさん» はじめまして、コメントありがとうございます!夢主イラスト可愛いと言って頂けて嬉しいです( *´꒳`*)ゆっくりではありますが更新頑張ります!ありがとうございます! (2021年12月1日 18時) (レス) id: 1c0863e534 (このIDを非表示/違反報告)
蒼井とーる(プロフ) - 夢主イラスト、とてもかわよくて推せます!性格も最高に面白くて大好きです!頑張ってください! (2021年12月1日 4時) (レス) @page5 id: f4c569577f (このIDを非表示/違反報告)
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