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追憶*魔王の権謀術数*3(Noside) ページ38

零と協定を結び終えた奏汰は「ちいさいみずでっぽうの『じゅんび』があるので」と言って軽音部から立ち去った。

タバスコで一撃必殺、は諦めていなかったらしい。殺意高ぇな。やっぱり敵に回さんとこ。

本日2回目の誓いを立てながら、零は彼の出ていった方を見つめ、それから棺桶の蓋に腰を下ろした。口を真一文字に結び、視線を宙に投げて考えを巡らせる。

(ああ言ったは良いものの……。Tricksterの子らを蔑ろにはできんし、そうなれば、どうしてもAくんの周囲への警戒が怠ってしまう)

さしもの魔王陛下とて、磐石な生徒会が相手ともなれば、よそ見をしている隙などないに等しい。

(その間にAくんに危険が迫る可能性を考慮すると、)

気難しい表情で顎に手を当て思案に暮れた。
それから数秒。考えがまとまったのか瞳に覇気を宿しながら。

「他にも協力者を募る必要がありそうじゃな」

と呟いた。

そもそも、零は朝に弱く夜以外は行動が鈍くなってしまうし、常にびしょ濡れの奏汰では目立つこと間違いなしだ。情報収集どころか、逆に怪しまれて警戒されてしまうかもしれない。

(明日にでも、わんこにAくんのことを気にかけるよう言い聞かせるとしよう。最近のわんこは気が立っておるし、言うことを聞くかは五分五分じゃが)

分析しながら目を瞑る。

まさか眠ってしまったのでは、と思うほど長い間じっと目を閉じていた零は、心の奥底に湧き出るマグマのような感情を押さえるのに必死だった。激しい憤りが頭の中で渦を巻き、慎重な思考を阻む。

(もとよりあやつらの愚行は目に余っておった。そこにAくんが関わってくるとなると……)

何度か深呼吸を繰り返し、ゆっくりと目を開く。

険しい顔をしていたのが一転。
くく、と愉快そうに失笑を溢すと、隠れた月を見透かすようにじとりと睨めつけた。

ウェーブのかかった長い髪の毛をかきあげ、くしゃくしゃと乱雑に掻き乱す。黒い髪の隙間から、ちらりと悪鬼のような笑みが覗く。

「学院が口出ししないのを良いことに好き勝手しおって……。些か、付け上がりすぎておるようじゃのう」

投げ出すように足を組んだ零は、自分の顔を覆うように片手を重ねた。


──お灸を据える良い機会じゃ。腕が鳴るわい。


誰にも聞こえないような声で呟かれたそれは、空気に毒のごとく溶け込んだ。

追憶*道化の奇策縦横*1(Noside)→←追憶*魔王の権謀術数*2(Noside)



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yukki(プロフ) - 続けてくださって嬉しい限りです!これからも応援しながら作者様の作品を読ませていただきます!! (2020年1月11日 23時) (レス) id: c7ca82405e (このIDを非表示/違反報告)
すみぃ(プロフ) - 続けて下さってほんとに嬉しいです!!pixivあんまり詳しくなくて作者様の作品見れるか不安なんですけど勉強します!!これからも影ながら応援しております!頑張ってください! (2020年1月11日 19時) (レス) id: f77c46eafb (このIDを非表示/違反報告)
「なる。」(プロフ) - 作者様の書き方がとても好きですし、凄く読みやすいと感じています。なので、占いツクールでの活動を続けるという決断をなされた事が、凄く嬉しいです。最後になりましたが、更新、楽しみにしながら気長に待ってます。 (2020年1月11日 12時) (レス) id: 61cc988ea5 (このIDを非表示/違反報告)
「なる。」(プロフ) - こんにちは。突然ですが、コメント失礼します。占いツクールでの作品の書き方ですが、台本書きでは無い他の作者様も大勢いますし、現に私も台本書きはしていません。書き方は作者様の自由なので、台本書きでも、台本書きじゃなくても、どちらでもいいと思います。私は、 (2020年1月11日 12時) (レス) id: 61cc988ea5 (このIDを非表示/違反報告)
Tatutatu(プロフ) - この作品とても好きです!続ける決断をなさってくれてとても嬉しいです……! (2020年1月11日 10時) (レス) id: b586c3b914 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:苺バニラ | 作者ホームページ:http  
作成日時:2019年10月14日 12時

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