人違いの神様事件簿*4 ページ42
引っ張ったり、つついたり。
とにかくあちこち弄り回していると、何やら視線を感じた。
「……なんですか?コレ、やっぱりお返しします?」
「ふふ。いえ、いいです」
そこをなんとか。
本音を言うなら「キモい。返す」とノシ付けてプレゼントフォーユーしたいもん。しないけど。だって目の前の人がえらく満足げなのに、それをぶち壊すなんて、と少しの良心が勝ってしまったから。
「やっぱり、あなたといれて、そのこも『うれしそう』ですね」
先輩は噴水の縁に頭を預けながら、ふわふわぁと力が抜けるような声音で言う。不思議な人だなぁ。
人を水の中に引き込んできたかと思えば、ぬいぐるみ(キモい)をプレゼントしてきたり。良い人ではある、と思う。多分、おそらく、希望的観測で。といってもこのぬいぐるみに関しては嫌がらせかとも捉えられるけど。キモいもん。普通人に渡さないレベル。
けれど、目の前の笑顔を見る限り、この人は本当にこのぬいぐるみを可愛いと思ってそうだから。きっと趣味の悪い良い人なんだよ。
なんて考えを巡らせながら、変わらずぬいぐるみと戯れていると、頭の中で何かが引っかかった。
「あれ、なんだっけ?」
何か、大切なことを忘れているような……。
とても大事なことだった気がする。ええっと、なんだ。思い出せない。
そのときだった。
タイミングを狙ったかのように、キーンコーンカーンコーン、という無機質な音が響いた。まぎれもなく予鈴の合図。
「あっ!!!遅刻!すみません、俺急いでるんで行きますね!」
「まってください」
「ぐえへっ!?」
足を踏みだした瞬間、後ろ襟を引っ張られたせいで首が締まって変な声が出た。
「なんですか!?俺、本当に急がないと」
「ぼく、しんかいかなたっていいます。あなたは?」
無視ですか?確実に無視ですよね!?
どうやら名乗らない限り解放してくれないらしい。ったく、こんな急いでる時に……!!
「一年B組!城崎A!!」
「A、つぎもいっしょにぷかぷかしましょう♪」
「また機会があれば是非!それじゃ!!」
ぴしっと敬礼を決めつつ、俺は噴水から飛び出した。
後ろから「またきてくださいね〜♪」という能天気な声が聞こえてきた。
___
しんかいかなた……きれいな『こえ』ですね。きっとにんぎょさんです。※違います。
流星レッドに「にんぎょさんと『おはなし』しました……♪『あわ』になっていないので『こい』がかなったんでしょうね」と満足気に話す。学院の七不思議に『出会うと恋が実る人魚姫がいる』という噂が追加される。
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苺バニラ(プロフ) - りなさん» ありがとうございます!そう言って頂けると、嬉しい限りです!更新が遅めになっていて申し訳ない気持ちで一杯ですが、これからも頑張ります! (2019年8月20日 14時) (レス) id: 563228d52f (このIDを非表示/違反報告)
りな - 凄く良かったです!!面白かったです!!更新無理をせず頑張ってください!応援します!! (2019年8月20日 10時) (レス) id: 55c1958e88 (このIDを非表示/違反報告)
苺バニラ(プロフ) - りさこさん» ありがとうございます(*´ω`*)とっても嬉しいですし、励みになりました!りさこさんは優しい方ですね!今後も頑張ります!! (2019年7月29日 7時) (レス) id: 563228d52f (このIDを非表示/違反報告)
りさこ(プロフ) - 更新お疲れ様です!とにかく最高でした!!これからも応援してます!! (2019年7月29日 0時) (レス) id: c7281289de (このIDを非表示/違反報告)
苺バニラ(プロフ) - 夜桜ナイフさん» ありがとうございます!時間が空き次第でよければ、拝見させてもらいますね! (2019年7月14日 16時) (レス) id: 563228d52f (このIDを非表示/違反報告)
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