*°Lost song*°【朔間零】 (ページ3)

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1. first impression ページ3

彼と初めて出会った日、私は歌を歌っていた。

たった１人の祖母を亡くした、悲しみの歌を。

父が交通事故で他界した後、母は海外への出張が増え、私は祖母と２人きりで暮らしていた。
祖母はとても優しい人だったし、生活に不便は感じなかった。

我儘を言ったこともあったけれど、幸せな生活だった。

そんな祖母がある日突然倒れ、そのまま帰らぬ人となってしまった。

母は実母の葬式にも少し顔を出しただけで、すぐに海外へ戻ってしまった。

軽薄な人だ。
と、僅かな呆れに似た悲しみを抱えながら、私は祖母の墓の前に立っていた。

そして私の唇は、自然と歌を紡ぎ出す。

墓参りの時期でもないので静まり返った墓地に、悲しみに満ちた少女の旋律が、響き渡る。

最後の音を絞り出すように吐き出した、その時。

不意に、後ろから拍手の音がした。

『･･･っ！？』

勢いよく振り返ると、其処には私と同い年くらいの少年が立っていた。

「今の歌、お前が作ったのか？」

初対面なのに随分と馴れ馴れしい口調だ。
しかし、彼の宝石のような真っ赤に燃える瞳を見た私は、思わず警戒よりも先に返答をしていた。

『うん。私が作った･･･っていうより、自然と口ずさんでただけだけど』

彼はその目を少し細めると、

「いい歌だった」

と言ってくれた。

『ありがとう。･･････でも、お墓の前で歌を歌うなんて、非常識だったかも』

今更ながらそう言うと、

「まあな。此処には、起こして欲しくない奴も･･････いるんだろうしな」

少し、悲しそうな瞳だった。
全てを悟っているような、人間離れした雰囲気の少年。

最初は、そんなイメージだった。

『私、三木A。貴方は？』

思わず尋ねると、彼は少し驚いたように目を見開き、

「朔間零」

そう名乗って、手を差し出してくれた。

握った手は、ひんやりと冷たく、もしかしたら幽霊と出会ってしまったのではないかと、私は少しドキリとしたのだった。