299、パニック ページ5
『ちゃんと言いたいことぶつけてくるヨロシ』
神楽の言葉を思い出してふう、とため息を吐いた。
言いたい事をぶつける、か………。
私が聞きたいのは総悟が何故最近触れてこないのかという事と、どうして手を振り払ったのかという事の二点だ。
もし私を好きじゃなくなっているのならちゃんとその理由が知りたい。
だってそこを直せばまた好きになってくれるかもしれないだろう……？
けどその為には私の心の準備が必要だ。
だってもし好きじゃなくなった、なんて言われたら今度こそ号泣してしまう気がするのだ。
だから神楽には、『少し考えをまとめてから戻るからこっちは気にしないで欲しい』と言っておいた。
総悟にはメールだけ一応送ってあるし多分大丈夫。
桜並木がずらりと並んでいる風景をぼうっと眺める。
手すりに肘をついて少し気怠げにただぼんやりと考えていたら背後から駆け足の音が聞こえた。
思わず体を戻して大分近くなった足音の主を見ようとして。
目一杯体を引っ張られて抱きとめられた。
驚いている間に漂ってきた汗の匂いと、私が好きな匂い。
「……総、悟………？」
酷く息を切らした総悟は、ただただぎゅうと私を抱きしめてくる。
花見会場からそこそこ離れた所にいたのに何故総悟がここに………？
「は、ぁ………、A………、ふぅ」
相当走っていたのだろうか。
総悟の髪は汗でびっしょり濡れていて服の上からでも分かる程熱気を放っている。
もしかしてメールに気が付いていなかったのだろうか。
そうだとしたら悪い事をしてしまった。
「……少ししたら戻るから、とメールしたんだが………、ごめん。変な心配をかけてしまっ」
言葉は総悟の唇に吸い込まれていった。
驚きすぎて硬直している私を他所に総悟はただ少し震えた唇で触れるだけの接吻をする。
「………好き。好きだぜ、A。ごめんな」
何も言わない私をもう一度抱きしめて総悟は大きく息を吐き出した。
熱いくらいの体温と身近に感じる息。
気がついたら私はそれを思いっきり突き飛ばしていた。
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ぴっぴ(プロフ) - めちゃ面白かったです！執筆お疲れ様でした！！これからも応援してます！ (2021年2月14日 11時) (
レス) id: 4559ad2a7b (このIDを非表示/違反報告)
まあちゃん(プロフ) - とっても良い作品で思わず一気読みしてしまいました！こんな作品に出会えて良かったです、完結おめでとうございます！ (2020年11月8日 3時) (レス) id: 0f8101d4ba (このIDを非表示/違反報告)
累(プロフ) - からしさんの作品どれも大好きです。また作品読ませて頂きます。 (2020年11月4日 21時) (レス) id: 755be2d6bc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：からし | 作成日時：2020年7月11日 21時
