316、悪い奴だろ？(別視点) ページ22
「あの船が落ちたら緑死んじゃうかな？！」
「そりゃあさすがに死ぬんじゃねえか？」
物凄い勢いで走り抜けて行く二人は視線を眼前にある船に捕えたまま、するりと街を流れるように駆け抜けていく。
黒と赤はただひたすらあの船に向かって走り続けながらその状況下の中でもいつもと変わらないような口ぶりで会話を続けていた。
「こんな時白がいてくれたらなあ」
「馬鹿お前。さっき自分たちでやろうって決めただろうが」
「だってさー、今頃ハッチーとイチャイチャしてるのかと思うと行きたくなってうずうずするんだもん」
「するんじゃねえ」
「しないよー。ちゃんと我慢する」
「ならいいけどよ。
……で、あの船なんで落ちてると思う？」
「ボクの予想なんだけどねえ。……あそこ、師匠がいる気がするんだー」
その言葉に赤は思わず咳き込んだ。
「え？師匠って、あの？」
「うん。あの」
「行方不明になってもう数年経つけど」
「フラフラ旅するのが好きな人だもんねー」
「いやちょっと待てよくわからねえけどなんでそう思うんだ」
『無駄話はそこまでにしてください』
耳元で聞こえた青の声に、二人は押しだまった。
体を動かすことがあまり得意ではない青は遠方より無線機を使って二人とやりとりをしていた。
暫く集中するからと発言していなかったのだが……。
「終わったの？」
『ハッキングは完了しましたよ。黒、あなたの予想通りです』
師匠が暴れています。
その言葉に赤の顔が思いっきり引きつった。
「それで？うちの可愛い子供達を実験体にするんだっけ？」
「も、もうやめてくださいお師匠様……。死んでしまいます」
男の船の中は混沌を極めていた。
きらびやかに飾られていた装飾品も、シックなデザインの壁も、誰が見てもわかるほどの高級そうなソファーも。
全てが無残になった状態で転がっていた。
船は出力が弱まりフラフラと落ちたり上がったりを繰り返していて、その不安定の中緑は壁に取り付けられていた家具にしがみつきどうにか声をあげていた。
「なんで？こいつ悪い奴だろ？」
そんな重力すら不安定な状況下で平気そうに立っている師匠はヘラリと身震いするような笑みを浮かべて掴んでいた男を放り投げた。
グシャリと嫌な音がして壁に叩きつけられた男は吐血して咳き込んだ。
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ぴっぴ(プロフ) - めちゃ面白かったです！執筆お疲れ様でした！！これからも応援してます！ (2021年2月14日 11時) (
レス) id: 4559ad2a7b (このIDを非表示/違反報告)
まあちゃん(プロフ) - とっても良い作品で思わず一気読みしてしまいました！こんな作品に出会えて良かったです、完結おめでとうございます！ (2020年11月8日 3時) (レス) id: 0f8101d4ba (このIDを非表示/違反報告)
累(プロフ) - からしさんの作品どれも大好きです。また作品読ませて頂きます。 (2020年11月4日 21時) (レス) id: 755be2d6bc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：からし | 作成日時：2020年7月11日 21時
