306、ホワイトデー ページ12
部屋で書類を書いていると申し訳なさそうな顔をした総悟が私に何かを差し出してきた。
「遅れて悪い」
そう言って総悟が渡してきたのは小箱だった。
何なのかよくわからなくて困惑していると、総悟は箱を私に押し付けてホワイトデー、と小さく呟いた。
「ホワイトデー……?なんだ、それ」
「……あー、そういや説明してなかったっけ」
そう言って総悟はホワイトデーについて説明してくれた。
バレンタインに渡されたチョコを、今度はお返しする為の日なのだという。
もう過ぎているらしいが。
………もしかして、この中身チョコレート……?
「開けても?」
「………どーぞ」
なんだか恥ずかしそうにしている総悟を不思議に思いながらも私はその小箱を開けた。
中から出てきたのは……腕輪?
しかも二つ入ってる。
「チョコレートじゃない」
「え、チョコが良かったんで?」
「いや、チョコレートのお返しをするものだって聞いたからチョコレートが入ってるものだと……。これは、腕輪?」
銀色の腕輪には何か彫り物がされていてマジマジとよく見る。
………あれ、これ。
「名前が、入ってる?」
「…………」
「総悟と、私の名前だ。これ総悟が頼んだのか?」
総悟の方を見ると、真っ赤な顔をしていて思わず目を見開いた。
「……ペアなんで一つは俺の物でさァ」
真っ赤な顔のまま腕輪を一つ取り出して、総悟は腕に取り付けた。
私の方をチラリと見てきたので私も持っていた腕輪をつけてみる。
「…………ありがとう。すごく嬉しい」
お揃いの銀色が総悟と私の腕にある。
それが嬉しくてつい笑みを浮かべると、総悟は私に近寄ってきた。
驚く間もなく唇を奪われて空になった小箱が床へと落ちる。
「ん、ちょ。どこ、触って」
「またしたくなった」
「この間散々したばかり……っ、ん」
「いくらでもしたい。つか毎日したい」
「馬、鹿じゃないのか……っ。今、仕事中、んぅ」
「良いって言ったのはAだろ」
時と場所を考えてくれ頼むから!!
総悟の唇が私の耳元に触れ、手はさわさわと私の体を這いずり始める。
ちょ、本当にやめっ。
「ストーップ!!白に変な事しないでくれるかなあ?!」
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ぴっぴ(プロフ) - めちゃ面白かったです!執筆お疲れ様でした!!これからも応援してます! (2021年2月14日 11時) (レス) id: 4559ad2a7b (このIDを非表示/違反報告)
まあちゃん(プロフ) - とっても良い作品で思わず一気読みしてしまいました!こんな作品に出会えて良かったです、完結おめでとうございます! (2020年11月8日 3時) (レス) id: 0f8101d4ba (このIDを非表示/違反報告)
累(プロフ) - からしさんの作品どれも大好きです。また作品読ませて頂きます。 (2020年11月4日 21時) (レス) id: 755be2d6bc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:からし | 作成日時:2020年7月11日 21時