295、涙 ページ1
「誰が泣かせた……?」
けどそれは酷く怖い雰囲気を出している総悟の表情を見て喉から出てこなくなった。
……なんだか、とても怒っている。
「ちょ、沖田さん落ち着いて………っ?!」
「誰が俺の女泣かせたんだって聞いてるんでィ……っ!」
刀に手をかけた総悟に目を見開いた。
こんなところで暴力沙汰は……っ。
「ちょ、ちょっと待て俺の女ぁ!?」
レジャーシートに土足で踏み込んできた総悟は私の腕を無理やり引っ張り上げて立ち上がらせる。
驚いて何も言えないでいる私を後ろへと立たせて総悟は刀を抜いた。
止めようと手を伸ばして。
……この間振り払われた事を思い出して手がそれ以上動かなくなる。
「いくら旦那でもこれは看過できやせんぜ。覚悟しなせェ」
「ちょ、パンダさん!?この人止めてマジで!!」
「やんのかあぁ!?」
「神楽ちゃん煽らないで!?」
「あ……、そ、総悟。彼らは悪くない。やめてくれ」
ああ、つい考え込んでしまいそうになった。
とにかく今は暴走し始めてる総悟を止めなくては。
「さっきまでボロボロ泣いてたやつが何を言っているんで」
「本当に、目にゴミが入って痛かっただけだから。……頼むからやめてくれ」
私と目を合わせた総悟は、ため息を吐くと刀を鞘にしまった。
「んな嘘に騙されるわけねェだろうが。……で?本当は誰がどうやって泣かせたんで?きっちり説明してもらいやしょうか」
「いやえっとだな………」
どかりとレジャーシートの上に座った総悟は私の方に振り向いてちょいちょいと手招きをする。
お妙から借りたハンカチをぐっと握りしめて呼ばれるがままにそこへ腰を下ろした。
「いやそもそもちょっと待て。もしかして沖田君とパンダって……」
「結構前から恋人同士ですぜ」
「マジですか?!」
「はぁ?!パンダやめとくヨロシ!!泣かされるのがオチアル!!」
「よしチャイナ。おまわりさんの心を傷つけた罪で逮捕でさァ」
「傷ついた顔に見えないネ。パンダの方が死にそうな顔してるアル」
チャイナの言葉に総悟が俯いている私の顔を覗き込んだ。
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ぴっぴ(プロフ) - めちゃ面白かったです!執筆お疲れ様でした!!これからも応援してます! (2021年2月14日 11時) (レス) id: 4559ad2a7b (このIDを非表示/違反報告)
まあちゃん(プロフ) - とっても良い作品で思わず一気読みしてしまいました!こんな作品に出会えて良かったです、完結おめでとうございます! (2020年11月8日 3時) (レス) id: 0f8101d4ba (このIDを非表示/違反報告)
累(プロフ) - からしさんの作品どれも大好きです。また作品読ませて頂きます。 (2020年11月4日 21時) (レス) id: 755be2d6bc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:からし | 作成日時:2020年7月11日 21時