269、挨拶は必要ない ページ24
「赤信、決まったか」
「もちろんもうとっくに決まってるぜ」
黒を青維に預けた赤信は、私と顔を見合わせて互いに頷き合った。
きっと、考えていることは同じだ。
「そんじゃ、俺らの考えを言うぜ。せーの」
『追放』
赤信と私の声が重なった。
私たちの言葉が意外だったのだろう。
緑遠は驚いたような表情で私の方を見る。
「二度と俺たちの前に姿を現すことを禁ずる。
……だから、江戸から離れて自分の力だけで生きて、生き続けろ。それがお前の贖罪だ」
その言葉を私の背後で聞いていた総悟がため息をこぼして『お人好しが』と小さく呟いた。
お人好しなんかじゃない。
緑遠にとってこれはきっと辛い罰だ。
「緑遠、お前はもう仲間じゃない。次何かあれば遠慮なく私はお前に刃を向ける。………そのつもりでいてくれ」
「ええー!!納得いかな、モゴモゴ」
「はいはい黒。静かにしていましょうね」
「モゴモゴー!!!」
「……どうして、どうしてそこまで」
「……私はね、緑遠。お前がずっと羨ましかった」
顔をあげた緑に、私は少し悩んだ後言葉を続ける。
「たとえ偽物だったとしても、愛を注がれていたお前がすごく羨ましかった。
それと同時に、私はお前を尊敬していたよ。
緑遠は私たちに対して父上が死んだあの日までずっと優しく接してくれた。
父上からご飯が与えられなくて腹が減っていたら、自分のご飯を分け与えてくれた。
泣いている黒を慰めている姿を何度も見た。
歪だったあの家族の中で、確かにお前は姉のような存在だった。
………でも、今回のことを無罪放免で許すことはできない。
だから、憎しみの感情も復讐したい気持ちも全部捨てて、生きて生きて生き続けろ。
たとえどんなに辛くても苦しくても、死にたくなったとしてもだ。
……私を殺して、自分も死ぬつもりだったんだろう?だから、最後は足が付くような真似をしたんだろう?」
緑遠は何も答えない。
「あーあ、俺が言えることなんも残ってねーじゃん」
「ごめん赤信」
「ま、別にいいけどよ。つーわけだまっつん。緑のこと後は任せたぜ」
「全く仕方ない奴らだな……。分かった分かった。後はなんとかしてやる」
そう言って長官は緑遠の腕を引っ張った。
されるがままの緑遠を見た後、長官は私たちを見る。
一つ頷けば、長官はそのまま部屋を後にして行った。
別れの挨拶は、いらない。
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オートミール - こんなに読んで良かったと思ったことはありません\(>o<)ノ続きが気になります (2020年10月30日 0時) (レス) id: 038dc633ea (このIDを非表示/違反報告)
だいふく(プロフ) - どのお話も面白くて可愛くて大好きです!更新楽しみにしてます。 (2020年8月23日 19時) (レス) id: 29daa5366e (このIDを非表示/違反報告)
ARMY52260289(プロフ) - 久しぶりにこんな面白い小説に出会いました。。。一気に読んでしまって勿体なく感じてます(._.)何度も読み返そうと思います!パン屋のレジ打ちさんもとても面白かったです。お気に入りの作者さんに登録させて頂きました。応援してます! (2020年7月26日 17時) (レス) id: 5305a43fa0 (このIDを非表示/違反報告)
ミウラ(プロフ) - ほんとに面白くて好きです!更新楽しみに待ってます! (2020年7月26日 12時) (レス) id: 3103cb23ea (このIDを非表示/違反報告)
からし(プロフ) - 餡子さん» コメント有り難う御座います!一気読みしてくださってとても嬉しく思います(о´∀`о) またお暇な時にでも見に来てくださったら嬉しいですー! (2020年7月5日 21時) (レス) id: 926dbf1062 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:からし | 作成日時:2020年6月16日 9時