266、強く在りたいから(別視点) ページ21
黒の話は総悟にとって衝撃の連続だった。
震えて縮こまっているAの体を強く抱き寄せ、背中を優しくさする。
相当のトラウマなのだろう。
それでもAが落ち着くことはなく。
(それでも、俺ァ最後まで聞きたい。………ごめん、A。俺ァお前の事が知りてェ)
『ボクはそのあとどうしても殺したい欲求が耐えきれなくなってその場から立ち去ったんだけど……、後から青にいに聞いたよ?
白を殺そうとしたんだって?』
黒の言葉に優しくさすっていた手が動きを止めた。
(……Aを、殺そうと……、した?)
『ボクはずっとその時から憎くて……、憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くてっ!!
白の心を傷つけた緑を、ボクはずっと憎くて堪らなかったのに!!!
それでもボクは我慢して!!
白が緑を許して欲しいってみんなに頭下げたからずっと我慢してたのに!!!!
よくも白の心を、みんなを裏切ったな!!?!!』
苦しげな緑遠の声が聞こえて、赤信はバッと立ち上がった。
「これ以上はダメだ行ってくる!」
赤信が大声を出しながら部屋に乗り込んでいき、青維はため息をこぼした。
「堪え性のない人で困ったものです。……沖田隊長殿、酷い顔をしておられますよ」
青維に指摘されて、総悟は片手で顔を覆った。
それでも隠しきれない鬼のような顔に青維の視線がそっと外れる。
「赤だけじゃ黒を止められませんから僕も行ってきますが……、白をお願いします。今それは役に立ちませんので」
そう言って青維も部屋に入っていき、黒の騒ぐ声や暴れる音が聞こえる中、総悟はどうにかAの事だけを考えてAの背中を撫でた。
本当は今すぐにでも部屋に入って、Aを殺そうとしたやつに目に物を見せてやりたい。
けれど、こんなに震えてしまっているAを置いていく事など、総悟にはできなかった。
「A……、悪ィ。ごめんな」
謝罪を口に出したのは無意識だった。
自分でも何に対して謝っているか分からずにただ謝罪を口にする。
(……落ち着け、私。あれは、過去の事だろう。今は怖がっている場合じゃない)
グッと総悟に抱きついて、深呼吸したAはそっと総悟から離れた。
その様子を心配そうに見つめる総悟にどうにか笑いかける。
「……行こう。緑遠との決着を付けなくては」
「…………分かった。具合悪くなったらすぐ言いなせェ」
震えはもう止まっていた。
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オートミール - こんなに読んで良かったと思ったことはありません\(>o<)ノ続きが気になります (2020年10月30日 0時) (レス) id: 038dc633ea (このIDを非表示/違反報告)
だいふく(プロフ) - どのお話も面白くて可愛くて大好きです!更新楽しみにしてます。 (2020年8月23日 19時) (レス) id: 29daa5366e (このIDを非表示/違反報告)
ARMY52260289(プロフ) - 久しぶりにこんな面白い小説に出会いました。。。一気に読んでしまって勿体なく感じてます(._.)何度も読み返そうと思います!パン屋のレジ打ちさんもとても面白かったです。お気に入りの作者さんに登録させて頂きました。応援してます! (2020年7月26日 17時) (レス) id: 5305a43fa0 (このIDを非表示/違反報告)
ミウラ(プロフ) - ほんとに面白くて好きです!更新楽しみに待ってます! (2020年7月26日 12時) (レス) id: 3103cb23ea (このIDを非表示/違反報告)
からし(プロフ) - 餡子さん» コメント有り難う御座います!一気読みしてくださってとても嬉しく思います(о´∀`о) またお暇な時にでも見に来てくださったら嬉しいですー! (2020年7月5日 21時) (レス) id: 926dbf1062 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:からし | 作成日時:2020年6月16日 9時