184、その糸を ページ37
隊長の言葉に頷いて、屯所に戻ろうとみんな揃って踵を返した。
雪の中をザクザクと歩いて暫く。
『そのまま帰すワケないだろう？キキキキ……』
妙な、嗄れた甲高い声が頭の中で聞こえた。
酷い頭痛に頭を抑えて蹲る。
私は一番後ろにいたせいか、隊長も加藤も気がつかない。
「ま、って……」
出た声は小さすぎて、彼らには届かなかったようだった。
彼らの後ろ姿を見ながら、酷い痛みと共に先程の声がこっちに来いと私の頭の中で言い。
隊長に手を伸ばしながら、意識がブラックアウトした。
「ああ、やっと来たね。待ちくたびれたよ」
あの、嗄れた甲高い声に起こされて閉じていた目を開けた。
慌てて倒れていた体を起こしてその声の奴から距離をとった。
酷い頭の痛みも、寒さも無くなっていてつい周辺を見渡す。
雪も何もない、まるで裏路地のような場所にいる……。
これはまるで、あの占師と邂逅した時のような。
「ああ、やっぱり良い糸を持っているねお前さん。それをあたしにお寄こし」
「……お前、誰だ」
隊長は、加藤はどこに行った！
あの雪は？！
「相当寒いはずなのに、かなりの精神力だねえ。いつまでもつかなあ」
「どういう事だ！！」
「あたしは占師さね。まああんたらの知ってる占師とは違うがねえ」
…占師？
「……占師？あの、爺さんと同じか？」
「爺？まさかお前峰苑と会ったのかい？！」
急に形相を変えた婆さんに、私はたじろいだ。
……逃げたほうがいいのだろうと思ってゆっくり後ずさるが、背中が壁のようなものに当たって後ろを振り向いた。
壁なんて何もないのに、なぜ、この先にいけないのだろう。
「お前峰苑に占ってもらったのかい？！」
「……そうだと、言ったら？」
「あああ！！今思い出してもムカつくさね！！あいつに当主の座は絶対譲らない！！」
当主？
それって隊長の話にあった…。
「その糸さっさと寄越しな！！」
そう言って婆さんは私に掌を向けた。
その瞬間、身体中から痛みが走る。
「あああああああっ？！！」
酷い耳鳴りの中、聞こえた悲鳴は私の声だろうか。
それすらわからなくて私は自分の体を抱きしめるように腕を回して蹲る。
「引っ付いてて中々取れないねえ」
「がああぁっ！！」
痛い、痛い痛い痛い。
体が無理矢理引き裂かれているような激しい痛みと共に、体がいう事を聞かなくなって座り込んだ。
咳き込むと共に液体が口から吐き出されるような感覚がした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 194人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
からし(プロフ) - るいさん» コメント有り難う御座います！好きと言ってもらえてとても嬉しいです^ - ^ これからも更新頑張ります！ (2020年5月23日 21時) (
レス) id: 926dbf1062 (このIDを非表示/違反報告)
るい(プロフ) - うわぁぁめっちゃ好きです。めっちゃドキドキします。これからも更新頑張ってください！ (2020年5月23日 20時) (レス) id: 7170045398 (このIDを非表示/違反報告)
からし(プロフ) - ゆに。さん» コメント有り難う御座います！夢主は作者の好みが詰め込まれているので可愛いと思って頂けたならとても嬉しいです！またお暇なときにでも見に来てくださいね^ - ^ (2020年5月20日 7時) (レス) id: 926dbf1062 (このIDを非表示/違反報告)
ゆに。(プロフ) - たまたまこの作品を見つけたんですけど、ものすんごく面白いです。めちゃくちゃ面白いです。夢主ちゃんも可愛いし続きが凄く気になります！！頑張ってください！！！ (2020年5月20日 0時) (レス) id: 9d3542e5d1 (このIDを非表示/違反報告)
からし(プロフ) - 猫とやぎさん» コメントいつもありがとうございます！作者も早くくっつけたいです！更新頑張りますね^ - ^ (2020年5月19日 22時) (レス) id: 926dbf1062 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：からし | 作成日時：2020年5月18日 16時
