175、命令に初めて渋った日 ページ28
「……A、別れなさい」
長官にそう言われて、体が固まった。
局長たちのすぐに報告しなさいという言葉通り、長官へ報告を済ませたのだが。
長官から返ってきたのはそんな言葉だった。
……長官の命令には、逆らってはいけない。
この人は私の上司であり、私の父でもある。
だから、私は…、でも。
「とっつあん、俺ァ」
「総悟は黙ってろ」
はい、と言わなくてはいけないのに、言葉にならない。
どう、したら。
「……理由を、聞いても良いでしょうか……」
「駄目だ。お前は俺の言う事を聞いてりゃいい」
私は、影だ。
上の命令一つで、人を処分する……あの人の、作った。
だから、私は……。
「…………は、」
「絶対別れやせん」
はい、と言おうとした口を隊長に塞がれて、私は目を見開いた。
何を言っているんだ隊長。
相手は、警察庁長官…松平片栗虎だぞ。
隊長は真選組一番隊隊長とは言っても、その地位の差は雲泥の差だ。
下手したら、真選組にすらいられなくなるというのに…っ!
「総悟。お前わかってるのか」
「今、俺ァAの父親と対面してるだけでさァ。……父親に交際を認められなくとも俺ァ別れたり絶対しやせんぜ」
「Aがどんな過去を持っていて、どんなものを抱えていてもか」
「全部受け止める覚悟はもうありやす」
暫くの沈黙が部屋を包んだ後、長官からため息がこぼれた。
「……ああ、お父さん悲しい」
急に空気が変わって、私は目を瞬かせた。
口元にあった隊長の手が離れて、私は言葉を吐き出す。
「あの、長官…」
「総悟に何かされたらすぐこの父さんに言いなさい」
「え、あの」
「Aが初めて俺の命令で嫌がろうとしたなあ。ここまで成長していただなんて思わなかった」
成長?
これは、成長なのだろうか。
影として、長官の命令に逆らうなんて事すれば私は処分されるだけだ。
つまり長官の命令に逆らおうとするということは私にとっては成長ではなく退化の筈で。
「A、お前今はいって言おうとしやがったな」
「…そ、れは」
「お前がなんと言おうともう離すつもりはないんでお前もそのつもりでいなせェ」
「本気で離れたくなったら俺が離してやるから安心しろお」
「絶対ないから安心してくだせェお父さん」
「お前に父と呼ばれる筋合いはない!」
……私は、隊長と一緒にいても、いいのだろうか。
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からし(プロフ) - るいさん» コメント有り難う御座います!好きと言ってもらえてとても嬉しいです^ - ^ これからも更新頑張ります! (2020年5月23日 21時) (レス) id: 926dbf1062 (このIDを非表示/違反報告)
るい(プロフ) - うわぁぁめっちゃ好きです。めっちゃドキドキします。これからも更新頑張ってください! (2020年5月23日 20時) (レス) id: 7170045398 (このIDを非表示/違反報告)
からし(プロフ) - ゆに。さん» コメント有り難う御座います!夢主は作者の好みが詰め込まれているので可愛いと思って頂けたならとても嬉しいです!またお暇なときにでも見に来てくださいね^ - ^ (2020年5月20日 7時) (レス) id: 926dbf1062 (このIDを非表示/違反報告)
ゆに。(プロフ) - たまたまこの作品を見つけたんですけど、ものすんごく面白いです。めちゃくちゃ面白いです。夢主ちゃんも可愛いし続きが凄く気になります!!頑張ってください!!! (2020年5月20日 0時) (レス) id: 9d3542e5d1 (このIDを非表示/違反報告)
からし(プロフ) - 猫とやぎさん» コメントいつもありがとうございます!作者も早くくっつけたいです!更新頑張りますね^ - ^ (2020年5月19日 22時) (レス) id: 926dbf1062 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:からし | 作成日時:2020年5月18日 16時