男装パンダは恋を忘れられない【沖田総悟】3

106、効果は薄いようだ（別視点） ページ8

『怖いから総悟と一緒に寝たい…っ』

そう顔を赤く染めて言ったAの顔がずっと脳内にこびり付いていて、総悟は寝たふりをしていた息を少し大げさめにこぼした。
(……自分でやらせておいてアレだが…、すっげェいい)
真っ赤に熟れた顔や少し震えていた声、少しうるりとした瞳の一つ一つが総悟にダメージを与えてくる。

今回の幽霊騒動は十四郎や勲とAが一緒に寝たり、十四郎と抱きついたり。
総悟の心がモヤっとする事ばかり起こってしまったが、結果的にいえば良かったのだと言える。
一回こうして部屋を同じにしてしまえば、なし崩しにずっと一緒の部屋にいれるだろうし、意外とAは押しに弱い。
(警護しやすい為だなんだ言って誤魔化せんだろ)

それに幽霊が怖いというのも新しい発見だ。
また可愛らしいものが苦手だなとつい布団の中で笑みがうかぶ。




(さて……取り敢えずスキンシップ多めにしてはみてんだが、あんま効果あるように見えねぇな)

あからさまにスキンシップを増やしたお陰で表情の変化はかなり見れるようにはなったが、Aが距離をとるのは相変わらずで。

(気があるかもって思わせんのが一番だと思ったんだがねィ……。どうやらそんな頭すらねぇようだなァ……)

自意識の低さというか、自信のなさがそうさせているのだろうな、と思う。
A自身はどんなこともある程度卒なくこなすし、性格も別に悪い方じゃない。
好き嫌いの多さは見ていて飽きないし、最近は表情も豊かになってきている。

隊員たちが、『副隊長、何か変わった』と言っていたのを不思議そうに『何が？』と聞いていた時は笑いそうになった。
良い傾向ではあるものの、表情が柔らかくなったせいか隊員に声をかけられる事が多くなり戸惑っている様子でもある。

総悟もそれはあまり面白くないので、常に横に陣取って妙に懐いてきそうな奴は追い払うようにはしているが……。

(スキンシップが駄目なら……言動？言葉にすんのは得意だけどどうなんだろうなァ)
妙な勘ぐりをするのではないか。
それだけが少し心配であった。

(……ま、もう少しやってみるかね)

一筋縄でいかない事くらい、最初から分かっていた事だ。
いつの間にか隣で聞こえてくる寝息に、総悟は笑みを溢した。

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