男装パンダは恋を忘れられない【沖田総悟】3

128、一体感が大切（別視点） ページ30

総悟は別に加藤の恋路なんて実はどうでも良かった。

確かに人の恋路というものは面白いもので、ついちょっかいをかけたくなるものではあるが、今は自分の恋路が優先である。

目的は、加藤の尾行という名のデートにこぎつける為である。

最近のAはいくら誘っても二人きりで何処かに出掛けるような事をしない。
狙われているから、とか書類が、とか何かしら言い訳をして断ってくるのだ。
ならもう適当に理由をつけてしまうしかないと思っていたところに加藤の話が出て、これはチャンスだと。
総悟はそう思ったのだ。

事前に買っておいたAとのお揃いの服を箪笥から取り出してニヤリと笑みを浮かべる。
(人間っつーのは、一体感を感じるとその感じた相手に好感を抱く生き物だってテレビでやってたなァ)
それは形であったり、行なっている事柄だったり。
そういう事を共有すると仲間意識というものが芽生えるものであると聞いてから、密かに買っておいたのだ。

事前に洋服はこっちで準備するから、と言ってあるし、Aはわかったと頷いている。

(当日、どれだけAと接近できるか)

Aは総悟への恋心を忘れようとしているという事が先日の件で判明している。
なら、そんな気も起きなくなるくらいもっと好きになってもらう。
その為にパンダ呼びをやめ、スキンシップをし。
兎に角Aの頭の中を総悟であふれ返させる為にやれるだけやってはみている。

少なくとも効果はあるようで、Aから触れてくる機会も、嬉しそうに顔を綻ばせる事も増え結果は上々といえる。

「あともうちょっと、だと思うんだよなァ……」

つい独り言が漏れた。
Aから告白をしてくれるまで、あともう少しだと総悟は思う。
明らかに前よりも表情が豊かになって、嬉しそうにすることも増えた。
だから今回のデートで一気に近づきたいところである。

「？ 何がです？ 」
「なんでもねェ。書類終わったか？ 」
「あともうちょっとです」
「ん、じゃあそっちの束寄越しなせェ」

服をまた箪笥にしまい、総悟はAから書類を受け取って机に置いた。
(面倒だが…当日書類が気になって集中できねェなんてなったらそっちの方が余程面倒だしなァ)
打算的ではあるが、総悟が率先して仕事をしている様に、Aは。

(……加藤の事実はすっごく気に入ってたんだなぁ)

なんて的外れな事を思っている事を残念ながら総悟は知る事はない。

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