129、ペアルック ページ31
「加藤、何回手汗拭いてるんだ……」
私は思わずそう小声で呟いてしまった。
少し遠くにいる加藤はここからでも分かるくらい顔を緊張に固めていて、何度も何度も手を服で拭くような素振りをしている。
「まだあの女は来やがらねぇのか」
「ま、まあ女性というものは準備に時間がかかるものですから」
それに約束の時間は後もう少し先だ。
その時間には間に合うようにはくるだろう。
「……それにしても、この格好どうなんですか」
「敬語」
「あ、そ、そうだったねすまない」
尾行というから変装はするだろうな、と思っていたけど。
私は洋服姿で目立つ白髪は相変わらずカツラで隠している。
今回は女装ではない。普通に男物を着ている。
………男装である。
隊長も洋服姿で茶髪の髪をワックスで弄ってサングラスをかけている。
違和感しかないが本人的にはそれでいいらしい。
「この格好って…ペアルックのことかィ」
「…そう。わざわざ一緒の格好する必要ある?」
「面白そうだから」
隊長が服を用意するから、というからなんだろうと思っていれば。
ペアルックという…まあお揃いの格好がしたかったらしい。
流石に丸々一緒は嫌というか、防具の居場所がなくて困るから私はジャケットを一つ羽織らせてもらっているけれども。
というか体のサイズよく分かったなこの人。
「まあまあ。これなら一緒で遊んでても違和感ないでさァ」
「いやあるんじゃないかな?」
違和感だらけだと思う。
「お、あの女が来やしたぜ」
その言葉に慌てて隊長を自分の後ろにまわした。
最近は隊長にも普通に接客するようになったとはいえ遠目でも好きだった人は分かってしまうかもしれない。
「そんな警戒しなくてもバレやしねぇよ」
「いやでも…万が一があるだろう?」
「まあ、俺はバレても別にいいと思ってやすがね」
いやじゃあなんで変装したんだよ。
「…よし、動き出した。行きましょ、たい……総悟」
「ん、よくできやした」
「子供扱いしないでくれるかな…。頭を撫でるなっ」
「可愛いやつ」
「っ」
思わずバッと離れれば隊長は楽しげに笑って私の手を引いた。
「せっかくなんで楽しみながら尾行しやしょうぜ」
「え、あ……うん」
そう、だよね。
折角なら楽しんでも…バチは当たらないかな。
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からし(プロフ) - 猫とやぎさん» コメント有り難うございます!勉強大変だと思いますがその活力にこの小説がなれるなら嬉しいです^ - ^ 続編はもう公開してますから空いた時間にでも見に来てくださいね! (2020年5月19日 17時) (レス) id: 926dbf1062 (このIDを非表示/違反報告)
猫とやぎ(プロフ) - コメント失礼します!!学校が始まり…帰ってくれば塾…と占ツクあんまり見れてなくて死にそうになってたんですけど、この小説見た瞬間生き返りました…!!続編とても楽しみです!!!頑張ってください!!超楽しみにしてます!! (2020年5月19日 15時) (レス) id: 497823dae0 (このIDを非表示/違反報告)
からし(プロフ) - 常夏さん» コメント有り難うございます!楽しんでいただけているのなら何よりです!是非続編も宜しくお願いします^ - ^ (2020年5月18日 19時) (レス) id: 926dbf1062 (このIDを非表示/違反報告)
常夏(プロフ) - いつもキュンキュンして楽しませてもらってます! 続編も楽しみです(^^) (2020年5月18日 12時) (レス) id: 3853130063 (このIDを非表示/違反報告)
からし(プロフ) - 猫とやぎさん» 猫とやぎさん、感想をいつもありがとうございます!無事しっかりさせたようで良かったです^ - ^ 明日は更新できない可能性があって今日多めに投稿しましたが、明日も一話くらいはあげられるよう頑張りますね!また見にきてください(*^ω^*) (2020年5月16日 22時) (レス) id: 926dbf1062 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:からし | 作成日時:2020年5月6日 21時