男装パンダは恋を忘れられない【沖田総悟】3

116、火がついた ページ18

「と…兎に角一人でいないでください。Aさんも、赤信さんも。いいですね？」
「うぃー」
「はい」

痛みから立ち直った曙の言葉で、それじゃあこの辺で、と会釈を一つする。

「Aさん。お気を付けて」
「曙も、気をつけて。赤信は暴れたりせず大人しくしておいて」
「……チッ」

舌打ちしない。





病院を出て車にエンジンをかけてからはぁと息を吐いた。
なんだか、色々大変な事になってしまっているな…。

「パンダ」
「はい？」

俯いていた顔を上げて隣を見れば、椅子を倒し横になったままの隊長がこちらを見ずに話を進めていく。

「お前が抱えてる秘密とやらが厄介だって事はよく分かりやした」
「……すみません」

影の事とか性別の事ですね、本当すみません。
でもこればかりは私の一存ではどうすることも出来ないんだよ。

「俺ァ…諦めるつもりはありやせん」
「？」

なにを？
隊長はアイマスクを少し上げて片目だけで私を見た。
その真剣な眼差しに無意識に背筋が伸びる。

「余計火がつきやした。覚悟しなせェ」
「な、何を…？」
「全部掻っ攫ってまるごと曝け出して…二度と余計なもん見れねぇようにしてやりまさァ」
「いや、だから何の話で…」
「さあ。さっさと帰りやすぜ。…A」

アイマスクを戻し何も反応を示さなくなった隊長から視線を離し、ギアを変える。
……今、名前普通に呼ばなかったか…？？
車の中で、それだけがずっと頭に残ってしまっていた。





「…つまり、Aは誰かに洗脳を受けている可能性があるって事か？」
「洗脳というか、それに近い毒を受けている可能性があるような話でした。
オレが暴走しても受け止められるような人は今のところ隊長か副長くらいしか…」

屯所に戻り、曙から聞いた話を掻い摘んで局長と副長に説明をした。
局長は真面目くさった顔をしておいてさっぱり分からんとかぬかしやがったので無視して副長にだけ話を進めていく。
さすが副長だ。少し話しただけで事態が深刻になってきている事が分かったのだろう。
ものすごく眉間にしわを寄せて考え込んでいる。
一方の局長はえ？何？と言わんばかりの顔をしていて…少しムカついた。

「結局Aと総悟をペアにして間違いは無かった…つー事だな。Aは何か異変に気が付いたらすぐ総悟と俺に報告しろ。総悟もだ」
「了解しました」
「仕方ありやせんね…」
「仕方なくねぇ」

本当、副長にはご迷惑をお掛けします。

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