男装パンダは恋を忘れられない【沖田総悟】3

120、万事屋の依頼（別視点） ページ22

「うわ、Aさんちょ、…。うわっ…うわぁー…」
「黙れ童貞」
「いやだって？！凄いですよアレ！？」
「ちょっと寄って太もも撫でてるだけじゃねぇかけしからん」
「銀ちゃんは鼻血拭くヨロシ」

Aはそっと女性に頬を寄せた。
まんざらでもなさそうな女性はにこりと笑みを浮かべて耳元でなにかを喋ると、Aはゆっくりと女性を愛おしそうに頭を撫でる。
肩に手を回して首元に唇を寄せればくすぐったそうに女性が肩を震わせた。

(……ホストしてた時も思ったけど…あいつ妙に手慣れてるんだよなァ)
双眼鏡を外し、総悟はホストをした時の事を思い出した。
Aはあの時も異様に女性慣れした態度でどんどん客を集めていて、辞めるときに店長に引き止められたくらいあの日の売り上げが良かったらしい。
無表情なのに。

「あいつ実は女好き…？」
「それはないと思いやすぜ。基本は自分から近寄らねぇですし」
「なんだそれ意味分からん」
「……どうもああいったホスト的な接客に慣れてるらしいんでさァ」

和やかなそのムードは新八の言葉に一気に様変わりした。

「あ、あの男の人、刃物、刃物持ってますよ！？！」

犯人が激情のあまり行動を起こし始めたらしい。
新八が慌てて立ち上がろうとするのを銀時が抑える。

「なんで止めるんですか？！」
「おいおい、忘れたのか？パンダはあんなナリでも、」





「俺のまゆたんから離れろぉおおおお！！！！」

男が刃物を持ってAへと向かってきた。
その様子に女性はひっと小さく悲鳴をあげるが、それを優しげに撫でる。

「…大丈夫。絶対なんともならない」

そうして少し表情を和らげたAは、男の刃物を思いっきり蹴り上げた。
そのままその懐に入り込み思いっきり腕を掴み。

男は背中から地面に叩きつけられた。

「はい、午後1時54分。殺人未遂で現行犯逮捕」

Aの少し気の抜けた声が周囲に響いた。




『パンダはあんなナリでも……、真選組だぜ？』

銀時のその言葉通り、Aはたった一人でその男を完封した。
すでに男は背後に手錠をかけられ、Aがその男の上に座って電話をかけている。
その様子を見ていた新八は安堵の息をもらした。

「…凄かったです。あっという間でした」
「蹴りが超綺麗だったアル」
「ま、アイツは……」

白鴉だからな、これくらい楽勝だろと言いそうになった言葉を銀時は飲み込んだ。

「ところで…あれ、沖田さんは？」

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