206、失いたくないもの（別視点） ページ11
海へと飛び込むAの姿を見て、沖田はひゅっと喉がしまったような感覚に陥った。
身体中の痛みを忘れ無理矢理動かし思いっきり足にささった小刀を抜いた。
抜いた衝動で血が噴き出すがそんな事はどうだってよかった。
(守るって、決めたのに)
上着を急いで脱ぎ、沖田は躊躇せずに海へと飛び込んだ。
もう二人の体は大分深くまで沈んでしまっていて、必死に手足を動かす。
嫌だ、頼む。
逝かないでくれ。
もうすこし、後もう少しというところで、Aの体から力が抜けたように男から離れていく。
それを男が引き寄せるのをみて、心がぐちゃぐちゃになった。
返せ、それは俺のだ。
俺だけの。
男は、ふっと気が付いたように沖田を見た後、そっとAを差し出した。
受け取った瞬間、男は確かに。
Aと似た、優しい笑顔を向けていた。
海から上がり、息をしていないAに人工呼吸を施す。
場には既に土方がいて、その様子を真剣な眼差しで見つめていた。
「ごほっ…ごほごほっ…はぁ、はぁ……」
Aが息を吹き返した。
ホッとして身体中の力が抜けていく。
「…良かった…」
「総悟、救急車と警察、呼んでおいた。お前も止血ぐらいしとけ」
そんな姿風鉈が見たら悲しむぞ。
そう言い切った土方は海にあがるもう1組を見た。
「あっちは俺がなんとかしてやる。風鉈が起きたら、きっちり説教かましてやれ」
「…お言葉に甘えさせてもらいやすよ」
どうしてAはこんなことをしたのか。
その答えも確かめなくてはならない。
「なんで目が覚めねぇ！！」
病院で怪我の手当てをした沖田は、痛む身体を無理矢理動かして寝ているAの元へ来ていた。
海水をいくらか飲み込んでしまったようではあるが、命に別状はない、すぐに目が醒めるだろうと医者は言っていたというのに。
Aは二日経っても一向に目が覚めなかった。
Aの顔を見て表情を歪めた沖田が悔しそうに叫ぶと、見舞いに来ていた優菜がそっとAの手をにぎった。
「私がこの子と会ったのは、二年前の事よ」
Aは、怪我ひとつなく、ただ酷くぼんやりとした顔で路地裏に座り込んでいた。
その顔は今とは違い、全てを失ったような、悲しさを通り越した、まるで枯れた花のような顔をしていて、優菜はそれを見てとても心を痛めたのだと言う。
行く宛もない、どうしていいかもわからない。
そうぼんやりしながら言う彼女に、優菜は手を差し伸べた。
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つむ(^p^)**(プロフ) - 思わずキュンとしてしまう場面が多々あり、沖田の純愛ぶりにはとても胸が熱くなりました。本当に大好きです。長文失礼しました。これから先もずっと見返して、また感動したいと思います！ (2022年1月11日 1時) (
レス) id: 7bdd5c1516 (このIDを非表示/違反報告)
つむ(^p^)**(プロフ) - 2年越しとか笑えないくらい経ってからのコメント失礼します。夢主ちゃんの芯の強さにも心惹かれるものがあったし、作中で出てくる女の子たちもみんな根が優しくて夢小説という括りを超えて純粋に感動出来た作品でした。夢主ちゃんと沖田にはこちらも (2022年1月11日 1時) (レス) @page19 id: 7bdd5c1516 (このIDを非表示/違反報告)
からし(プロフ) - 瑞稀さん» ここまで読んで頂き有難う御座います！面白いと言って頂けてとても嬉しいです^_^ (2020年4月16日 21時) (レス) id: 926dbf1062 (このIDを非表示/違反報告)
瑞稀(プロフ) - めちゃめちゃ面白かったです…！！！一気読みしてしまいました笑 完結おめでとうございます！ (2020年4月16日 21時) (レス) id: 503fd2a4ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：からし | 作成日時：2020年4月6日 23時
