207、1人にしないで（別視点） ページ12
拾ってすぐ、Aは今とはうってかわってとてもおとなしい子だった。
笑うことも、泣くことも。
まるで生きるという事そのものを諦めているかのようで。
しかし、時間が流れるにつれAは次第に笑顔を取り戻していった。
その笑顔に周りのみんなは喜んでいたけれども、
「その笑顔はずっと偽物だったわ」
「…」
周りを心配かけないよう、笑顔を浮かべることにしたようだった。
そしてある時。
「夜中、Aは包丁を片手にじっと座っていたの」
『約束したのに、一緒にって。守りたかったのに』
そう言いながら泣きじゃくるAの体を、優菜は優しく抱きしめた。
一度忘れなさい。
忘れて、心が癒え、受け止められる日が来るまで。
「それからはあの子は完全に忘れちゃったみたい。
でも偽物の笑顔は変わらなくてねぇ、困っていたの」
そこに、あなたが来たのよ。
そう言って優菜はにっこりと笑った。
「あなたと会ってからAちゃん、とても楽しそうだったわ。
まるで失った感情を取り戻すみたいにどんどんこの子は豊かになっていったの。
沖田総悟さん、あなたがこの子を変えてくれました。
本当に、ありがとう」
そう言って笑った優菜に、沖田は言葉が出せなかった。
何を言っていいのか、分からなくなったのだ。
「今はね、きっとこの子過去と戦ってるわ。
だから、そばにいてあげて。ひとりにしないであげて。
この子はあなたを捨てたわけでも、兄を選んだわけでもないわ。
この子が選んだのは、あなたが生きる道」
「っ、俺は、俺はAがいねぇと生きてたって辛ぇだけだ…っ！！」
「それは、帰ってきたら言ってあげて。この子には叱ってあげる人も必要だわ」
そう言ってから、優菜はAを見つめた。
「A、あなたは愛する人を守りたかったのでしょうけど、あなたも愛されていることを忘れちゃダメなのよ。
必ず帰ってきなさい。
ここに…、沖田総悟さんのところに、私のパン屋に。
帰ってきたら、そうしたら」
また笑顔を見せて頂戴。
去っていった優菜の後ろ姿を見送って、沖田はAの手をにぎった。
穏やかな表情で、眠りにつくように意識を失っているAの顔をじっと見つめる。
「…待ってる。ずっと待ってるから。
絶対帰ってこい。…俺を、1人にしないで…」
A、お前がいないと、俺は。
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つむ(^p^)**(プロフ) - 思わずキュンとしてしまう場面が多々あり、沖田の純愛ぶりにはとても胸が熱くなりました。本当に大好きです。長文失礼しました。これから先もずっと見返して、また感動したいと思います！ (2022年1月11日 1時) (
レス) id: 7bdd5c1516 (このIDを非表示/違反報告)
つむ(^p^)**(プロフ) - 2年越しとか笑えないくらい経ってからのコメント失礼します。夢主ちゃんの芯の強さにも心惹かれるものがあったし、作中で出てくる女の子たちもみんな根が優しくて夢小説という括りを超えて純粋に感動出来た作品でした。夢主ちゃんと沖田にはこちらも (2022年1月11日 1時) (レス) @page19 id: 7bdd5c1516 (このIDを非表示/違反報告)
からし(プロフ) - 瑞稀さん» ここまで読んで頂き有難う御座います！面白いと言って頂けてとても嬉しいです^_^ (2020年4月16日 21時) (レス) id: 926dbf1062 (このIDを非表示/違反報告)
瑞稀(プロフ) - めちゃめちゃ面白かったです…！！！一気読みしてしまいました笑 完結おめでとうございます！ (2020年4月16日 21時) (レス) id: 503fd2a4ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：からし | 作成日時：2020年4月6日 23時
