パン屋のレジ打ちさん【沖田総悟】1 (ページ48)

今日:67 hit、昨日:8 hit、合計:262,805 hit

48、無意識の中に（別視点）ページ48

女に声をかけたのはそいつのストーカーで、明らかに興奮した表情で女を見ているのに、奇遇ですねぇなんて呑気な声を出している。
あまりの危機管理のなさに呆れ、沖田は素早くAの肩へと腕を回した。
…要は威嚇だ。

「は、はい。良かったらい、一緒に」
「はいストップ。これ遊びに来てるんじゃなくて仕事しに来てるんでさァ。サボってねぇで行きやすよ」

有無を言わさず男から離し、坂田達の元へ引っ張っていく。
ちらりと後ろを見れば、少し恐怖に顔を歪めたAが唇を震わせていた。
(…相手を刺激しねぇよう取り繕ってたってわけかィ)

「お、沖田隊長…、なんで、あの人」

事件になったら面倒だからと言い放った沖田は、自分の心に疑問を持っていた。
ありがとうと呟くAに言い訳がましく言葉を紡いでいる自分に。
(そう、怪我させちまったから、だから仕方なく)
柄にもなく罪悪感を感じているだけだ。

坂田達の元へとたどり着き握っていた腕を離した。
喧嘩をやめた二人に、ストーカーっぽいのがいる、なんて確信を得ていないとでも言わんばかりに言うAの言葉に土方と沖田の目が合う。

「ぽいじゃなくてまんまでさァ。アンタ帰りよくつけられてんの気付いてねェの？」
「えっ！？」

やはり気がついていないようだった。
驚いたような声を上げるAにため息が出そうになる。

「桂の野郎の目撃情報がアンタのパン屋付近だったんでしばらく張り込んでたんですがねィ、よくいやしたよ、あれ」
「うわ、こっちもストーカーかよ…。Aなんかされたか？」
「ううん、大丈夫です。沖田隊長が助けてくれて…」
「そういう事なら俺らの誰かとは常に一緒にいた方がいいな。大変だな、風鉈」

そう言った土方に、Aは笑顔でありがとうと言った。
その笑顔を間近で見た沖田は、その笑顔に違和感を感じた。
いつも店で見せる笑顔ではない、本物の笑顔を向けたのが土方だと。
それが何故か非常に面白くなかった沖田はつい、遊んできやすと言いまるで見せつけるかのようにスキップしてその場を離れた。

離れてから、万事屋の神楽を見つけ、仲の悪い二人は遠泳競争を繰り広げ。

神楽の腹減ったという言葉で喧嘩が終わった沖田は、次何しようかとA達がいたテントに近付いた。

しかし、そのテント内は遊びに来ているのだというのに暗い雰囲気で、明らかに怒ったような顔の坂田と、顔色の悪いAの姿が見えて思わず駆け寄った。