30話 ページ30
エレンは、自分を追い詰めたように目をきつく閉じ太腿の上に置いている拳を固く握った。
エレン自身、今の自分の状態すら分からないのに、人間に殺されるかもしれないという状況に置かれきっとさらに混乱したのだろう。
ミルフィーナは、そんなエレンの様子を静かに見守った。
少ししてから、キッツ隊長が吠えだした。
「もう一度問う！貴様の正体はなんだ！」
キッツ隊長のその問いにアルミンとミカサが振り返る。エレンは、3人の顔を見たあと、キッツ隊長の方を強い眼差しで見て息を吸った。
「人間です！！」
エレンの声が辺りに響いた。
風がミルフィーナたちとキッツ隊長たちの髪を揺らした。それは数秒のはずなのに、まるで何分も経っているような感覚だった。
そんな中、
「そうか･･･。悪く思うなよ･･･。」
と、静かな声が発せられた。
どうやら声の主はキッツ隊長のようだ。その証にキッツ隊長は、ゆっくりと手を上げ始めた。
瞬間、ミルフィーナたちは絶望へ突き落とされた。
キッツ隊長は手を挙上させながら言葉を続けた。
「誰も、自分が悪夢じゃないことを、証明出来ないのだから･･･。」
キッツ隊長の手が完全に上がった。瞬間、ミカサが剣を投げ捨て、走り出した。
「エレン！アルミン！ミルフィーナ！上に逃げる！」
ミカサはそう言ってエレンを担いで壁に向かって走り続けた。
「アルミン！行くよ！」
ミルフィーナは絶望のあまり、動けずにいるアルミンの腕を引きミカサの後を追った。･･･が、アルミン自身に動く気が無いのか腕を引いてもなかなか、立ち上がらず、思うようにミカサに追いつけずにいた。
「アルミン！このままじゃ死んじゃう！アルミン！」
ミルフィーナは必死に叫びながらミカサを追う。
その時、エレンがミカサの腕を解きミカサの手を引いて、ミルフィーナとアルミンのところへと走り出したのだ。
ドォンッ！
鼓膜に直接響くような音がした。
もうダメだとミルフィーナたちは思った。だが、エレンだけは希望を抱いた瞳でミルフィーナとアルミンを自分の体に密着させた。そしてエレンは自分の親指の付け根に噛みついた。
瞬間、超大型巨人が現れた時と同じようにイナズマが走り、眩い光に一瞬包まれた。
それと同時に榴弾が当たった音がした。
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作者名：リー | 作成日時：2018年8月6日 18時
