29話 ページ29
それを聞いたキッツ隊長は、汗をタラタラと流しながら更に顔を険しくした。
「バケモノめ！もう一度やってみろ！貴様を粉々にしてやる！一瞬だ！正体を表す暇などない！」
キッツ隊長がそう吠えると、エレンは目を見開いた。
「正体！？」
「大勢のものが見たんだ！お前が巨人の体内から姿を現す瞬間をっ！たとえ貴様らが、おうより授けられし訓練兵の一部であっても、リスクの早期排除は妥当だ！私は間違っていない！」
キッツ隊長の言葉にはエレンに対する恐怖しか伝わってこなかった。
「これ以上、貴様相手に兵力も時間も割くわけにはいかん！私は貴様らに！躊躇なく榴弾をぶち込めるのだっ！」
キッツ隊長がミルフィーナたちを指さしながら言うと、その隣にいた白髪の駐屯兵がなにかを呟いた。
それを源に更にもう1人の駐屯兵がエレンを今すぐ殺そうと口走った。
「殺すなんてなむぐぐっ！」
ミルフィーナが駐屯兵の言葉に耐えられずそう言いかけると、アルミンが口を押さえた。
「ミルフィーナ、今は耐えるんだ！」
アルミンはそう言ってミルフィーナをなだめる。･･･が、ミルフィーナと入れ替わりでミカサが剣を抜いて前へ出た。それもかなりの威圧感を放ちながら･･･。
「私の特技は、肉を削ぎ落とすことです。必要に迫られれば、いつでも披露します。私の特技を体験したい方が居れば、どうぞ1番先に近づいてきてください。」
ミカサのその言葉にキッツ隊長が半歩後ずさった。そして、白髪の駐屯兵の反対にいる痩けた駐屯兵がキッツ隊長になにかをささやいた。
「おい、ミカサ、アルミン、ミルフィーナ、これは一体･･･。」
エレンが困惑に耐えられない様子で言った。
「ミカサ、人と戦ってどうする！」
アルミンがミカサへ必死に訴える。ミルフィーナは、そんなアルミンを横目に、簡単に今の状況を説明した。
エレンに説明しながらでも、ミカサの抱くエレンへの強い思いが胸に伝わる。きっと言葉では言い表せないほど、ミカサにとってエレンは大切な存在なんだろう･･･。そう考えると、この状況を何としてでも打破しなくてはならないとミルフィーナは強く思った。
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作者名：リー | 作成日時：2018年8月6日 18時
