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僕は昔から素直じゃなかった
…いつからだっただろうか、心を閉じたのは
家族もこの職業に良い印象を持っていなく、
"現実とちゃんと向き合っていない"とずっと言い続け、
それなのに、僕を普通に進学させやがった
家族のことは、昔までは好きだった
兄は確かに同じことを言い続けたけど、
"良かったんじゃない?"なんて言ってくれて、
今でも定期的に連絡は取っている
心を開いた人なんて、居ただろうか…
__________いや、居た
由佳だけだった
僕の本音を言えるのは、ずっとたった一人
それでも、その由佳でさえ隠し始めているような気がする
自分の本音が他人様が聞いて引かれるのがオチと決めつけていた
昔、偉いこと言ってたなぁ…
"自分の意見を言わないんじゃ、ただの人形と同じだ"と
……そうか、僕は人形なのか
他人に言うことができない
何も、表すことがない
悲しい奴だ
自分で自分を同情するよ
少なくとも、生まれてきてずっと心を開いてない訳じゃない
そんな事はあり得ない
自我が芽生えてない頃なんて、寧ろ全開きだろ
昔の記憶なんて曖昧過ぎて断片的にしか覚えてないけど、
もう中学の時点では閉じていたのは間違いない
ただ、目立ちたくなかったのもあるのかもしれない
自分を否定されるのが怖かったのかもしれない
だから、周りと合わせる選択をして、
今まで当たり障りなく過ごしてきた
"周りがどう思っているか"も気にして、
よく見るようにもなった
僕は、弱虫だ
自分の意思を知られるのが怖い
それだけは頭から消えない
まるで、呪いのようだ
紀章「ねぇ、A」
A「何ですか?」
紀章「言おうとしてたことは何?」
………いつも通りに繕えなくもなっちゃったか
"何でもないですよ"なんて言っても、
ツッコまれそうだな
何もかも、見破られそうで怖い
思い悩んでいる時、
久しぶりに懐かしい音が鳴った
紀章さんはポケットから白いガラケーを取り出し、
画面を見て眉を顰めた
そして、着信を取れば、
眉間に皺を寄せてたのが更による
…イケメンの顔、台無しだよ?((
紀章「……A、代わって」
その一言に、ガラケーを受け取ると名前の欄に
"伊月 由佳"と表記されていた
…別に、由佳とは何もないし、
嫌な顔をする必要なんて無いはずだ
耳元まで持っていき、"代わりました"と言えば、
"俺の嫌われよう、やばない?"なんて…
由佳の携帯から連絡きたものの、
本人ではなく怜音だった
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作者名:奏人(タクト) | 作者ホームページ:https://twitter.com/Takuto_Se
作成日時:2019年9月17日 22時