I、愛、哀2【谷山紀章】 (ページ6)

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目を開けると、
あまり見慣れない景色
"由佳の家"と頭で処理したときにはもう、
昨晩の事を思い出した

フラフラと立ち上がり、
窓に手を伸ばすと由佳の声が聞こえた

由佳「…何しようとしてんの」

A「外の空気を吸おうと思ってさ…！」

そう言うと、
"無理しなくていいのに"と言われた

「現場ではしっかりしな
…他人に弱みを握られたくないでしょ？

さて、朝ご飯何食べる？
こったものは作れないけど、
簡単なものなら作れるからさ」

A「……居候の身だから、何でもいい」

「じゃあ、パンとサラダとヨーグルトと卵とウインナーで」

A「…………ん」

テーブルに座って、テレビを点けた
丁度、ニュースがやっていて久しぶりに見た気がした
ぼんやりとテレビ画面を見つめていると、
悲惨なものや喜ばしいものが次々と流れた

「珍しくニュースに食いついてるね」

A「…いや、残酷だなぁって思うのと
しょうもない話でも報道されるんだなって」

「そりゃあね」

焼けている音が耳に入ってきて、
漂う良い匂いにお腹が軽く空いてきた

A「うぅ、メシ～！！！
もう、やけ食いしてやる！！！！！」

「やけ食いはダメ」

A「わかってる～…！」

ニュースの話題から、
急に食べ物の話題となった
放送されているものを見ていると、
行った時のある場所も紹介されていたが、
まだ行ったことのない場所が気になってしょうがない

"行きたいな、そのパンケーキ屋"

由佳が呟いたそのパンケーキ屋は、
この前、しもんぬ先輩と行った場所だった

A「時間がお互いに空いたら行くか」

「お、マジで！？
やったね～！」

上機嫌で作ったものを由佳はテーブルへと置いた

「さぁ、どうぞ！」

A「いただきま～」

ご飯を黙って食べながら、テレビを見ていた
都心とはいえ、遠いっちゃ遠い場所も紹介されていた
流石に全部食べ歩くのは一日では無理だけど、
一週間でも無理そうだ
…それに、仕事あるし

「…てか、マネージャーさんに連絡した？」

A「いや、してないから
後で携帯貸して」

「おけおけ」

A「暫くは、自力で現場に向かうしかないなぁ…」

「もしも、一緒の現場なら送ってもらえるように言っとくよ
…まぁ、お前のファンだからそんな心配もないとは思うけど」

A「……本当、僕のファンなんか止めといた方がいいって」

「そう謙遜しないの！
私だって、ファンだもん！！！」