I、愛、哀2【谷山紀章】

▼*Yuka Side ページ1

時刻は、22時30分を上回ったころだった


コンビニで、
好きな曲が流れていてテンションが上がっていた


自宅に帰って、
軽く飲んで寝ようと計画を既に立てていた
階段を上り、曲がり角を進むと家の玄関の前で座り込んでいる
丸い"何か"


近づいて行くと、
それはAだった

「え、何したの」


その声に反応した
…だけど、いつもより反応が遅い気がした


顔を上げたAの目には生気はなく、
微かに泣いた跡もあった
喋ろうと口を開けたA
唇は微かに色が悪くなっていた

座っているAの隣には、
大きな荷物がある

A「あの、ね…」


「何があったのか知らないけど、
まず、お風呂入ろうか
…"身体は資本だ"って言ったのはAだよ」


そう言うと、小声で
"そうだね"と反応した

普段から元気な性格でもなければ、
暗い性格でもない
どっちもどっちな性格

それにしても、Aがこんなに
落ち込んだのはいつぶりだろうか……


高校のあの事件以来、か…？
落ち込んだと同時にめっちゃ怒ってたっけ？？？
あの目は怖かったなぁー
初めて見たもん、あんなA

こんなに落ち込むのも珍しいけど………


鍵を開けてAの大きな荷物を持って、
玄関に置く


「待って、すぐにお風呂作るから
…あ、酒飲む？」


そう言うと首を横に振った
…当たり前か

自分の羽織っていたものをAにかけると
何処か切なげに呟いた

………高校からの仲なんだから、
別に少しのことで
"ありがとう"
なんて言わなくていいのに
それくらい、言わなくても気づくよ
私だって

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