マリオネットの本心3【谷山紀章】 (ページ32)

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第130話ページ32

あれから、
紀章さんと一回も会話を交えてない

何処か、喋りにくい雰囲気が、
僕と紀章さんの間に流れてしまい、
言葉が喉元で詰まってしまうのだ

他の人とは、
そんな事は無いんだけど………

僕が、ちゃんと"何に対しての謝罪"なのかを言わなかったから…
あの時、ちゃんと口にしておけば、
こんなことにならなかったのかな……

目の前の紀章さんは、
自宅のドアを開けては、入っていく
僕も玄関に足を踏み入れれば、
何故か奥に行かない紀章さん

A「き、しょ…さん？」

背後でドアが閉まった音が鳴った
それと同時に迫ってきた彼に、
一瞬にして体が硬直する

音を立てて閉まったドアに
鍵のかける音が響き渡った
…真っ暗闇の中、
そのまま彼は動かない

紀章「…さっきの、ちゃんと説明しろ」

普段は、そんな口調…
いや、声質で話さない彼に、
僕はただただたじろいでしまう

1人、脳内で自問自答を繰り返せば、
結局は振り出しに戻る

降り注いだ難問に、
どこから説明をしていいのか…ということ

結論からズパッと話すと、
流石の紀章さんでも
激おこプンプン丸になってしまうかもしれない

…だからと言って、
始めから説明すると、
『何の話をしてるの？』と言われるのがオチだ

1番の最適解は、前者だろうけども…………

＿＿＿＿＿＿＿ｸｼｭﾝ

耳を掠めたくしゃみ
″あー…″と零しつつ、鼻を触る紀章さん

思わず、紀章さんの手を触ると、
末端冷え性の僕でさえ、″冷たい″と思うほどだった

冬だから、しょうがないんだろうけど、
寒いものは寒い…
僕だって、寒いのは嫌いだ
………暑いのも嫌いだけど

A「紀章さん、」

名前を呼べば、
反応する彼

真っ暗でも、
こちらに視線を向けているのがわかる

A「お風呂、入りましょう」

………この一言で、
自分が自分で窮地に追い込んでいることなんて、
この時の僕は知らない