緑の魔法使い(乙)05 ページ15
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「うぅ………ん？ …ひ、ひぃぃぃぃ！ い、い、い……異端者ぁぁぁ！」
うずくまっていた男は誰が近づいて来たのかを確認するために顔を上げ、そして男はその正体がわかった途端悲鳴を上げながら飛び起き、叫びながら街のある方角へと走って逃げて行った。
「…」
緑の髪の人は無言のまま男が走って行った方角をしばらく眺めてからこちらに振り向き、こちらへゆっくり近づいて来る。
すると、私を囲むように生えていたイバラは彼が近づいてくるとゆっくりと地面へと潜り、周りはたくさんの穴だけが残る。
ゆっくりと近づいて来た彼は、地面に座っている私の目の前で突然スッとしゃがみ込んで私の身体をちらちらと確認するように見る。
「怪我してるね。 じっとしてて」
彼はそれだけ言うと、私の右足首に手をかざす。
さっき転んだ時に怪我をしたところだ。
彼は真剣な眼差しでかざしている手を見つめると、彼の手から緑の光が現れ、光が当たっている右足首の痛みがだんだんと消えていくのがわかる。
「痛みがなくなってく…」
「癒しの魔法。 僕は魔法が使えるからね」
「…さっきのイバラも？」
「そう。 植物を自在に操ることもできるんだ」
他の傷も治してあげる、と言って彼は転んだ時にできたかすり傷なども全て魔法で治してくれた。
「もう大丈夫だよ」
「あ、ありがとうございます」
すっかり怪我がなくなった私は緑の髪の人に深く頭を下げてお礼を言った。
彼が助けに来なかったら今頃どうなっていたか…。
「キミが無事なら良かった。 けどここはキミが来ていい場所じゃない。これからは来ない方がいい」
それだけを言って彼は森の奥へと消えて行ったのだった。
「本当にいたんだ…」
その日の夜、私は寝室のベッドに寝転がると、目を瞑って今日の昼間にあった出来事を思い出す。
特に鮮明に思い出されるのは彼の髪と瞳。
普通の人間にはない、夏の新緑のような鮮やかな緑色をした髪と瞳が私にはとても魅力的だった。
「…また、会いたいな」
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作者名：くろいつき | 作成日時：2020年4月15日 0時
