狂愛方程式【3】 (ページ7)

今日:3 hit、昨日:2 hit、合計:27,814 hit

107 ページ7

｢なに童貞がいっちょ前に嫉妬しとんねん｣

すっかり冷たくなった風に煙草を燻らせ、わざとらしく息を吐く
禁煙しとったのに、お前のせいで3本も吸ってもたやんけ

｢ショッピ君が誰好きになっても勝手やろ｣
｢でもあれは仕事に支障でるレベルなんや！｣
｢後輩の恋路も応援できひんの？尻拭いしたれや｣
｢…さっきからそんなん言うとるけど、シャオロンはええんか？｣
｢あ？｣
｢お前も、Aのこと、｣
『ロボロさん、遅くなりました』

通信機の向こうから聞こえる扉を開く音と、やや疲労を滲ませたAの声

｢俺が好きなわけないやろ！遊びにきまってるやん！｣

大きな声を出した
煙が変なとこに入ってむせそうになる

｢じゃあ、報告はしたから！｣

ブツっという音が、会話の終了を肯定した

｢はぁーー｣

ズルズルとしゃがみこむ
何やってんねやろ、俺

なんであいつのこと気になんのかわからへん
今までの女やったらかわいいとか大事にしたいとか
わかりやすい恋心だった
でも別にAは俺が守らんでも強いし、むしろ負かしたいし

最近人間として成長したっぽい笑顔をみると、美人やなって気持ちと見守ってやりたいっていう兄貴心みたいなんが出てくる
それも本心。本心、やけど、

ずっと思ってたことがあって

あいつの弱点を見つけて、俺に溺れさせて、澄ました愛想のない仮面をとっぱらって、
どろどろにぐちゃぐちゃになってしまったAが欲しい。
これもまた、認めざるを得ない本心だった。
いつも目で追ってしまうAを、俺のものに

そんな仄暗く汚い部分をもみ消すかのように、燃える葉先を携帯灰皿に擦り付ける

「なんであいつに褒められたいんやろ、俺」

俺のことを見てほしい
鋭い美しさで貫くのではなく、そのとげとげしさを抑え込む男になりたい

「でも俺、多分嫌われとーよなー…」

俺よりロボロとかゾムとかと一緒におるし
グルッペンとショッピ君は好きアピール露骨っぽいし
他の奴らもなんだかんだ関わりあるし

もやもやもやもや

「俺ってもしかして、めんどくさい系男子…！？」
「なに百面相してんのシャオちゃん、新しい一発芸？」
「うっさい大先生ころすぞ」
「リターンキツない？」

同じ野営地の大先生が一服しにやってきて、俺のお悩み時間は終了した

「もうすぐ帰れるなあ」
「…せやな」

そしたら、Aに会える

それだけで口角が上がる

俺に惚れさせたいと思う自分は、もう既にあいつに惚れてしまっているのかもしれない