狂愛方程式【3】 (ページ4)

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｢うーん、神に聞かなわからんけど、意識は正常そうやで？｣
『そんなわけないでしょう』

ベットに腰掛けて俺に手を握られているAさんは、絶対に俺を健康体だと認めない

さっきまでAさんが座っていた椅子にはグルッペンさんが座り、その横に立っているトントンさんがいくつか俺に質問をした
俺は1週間意識がなかったらしくて、しんぺい神さんが軍医として戦場に出てる今、居残り組が交代でついていてくれたようだ

7日か…

｢戦況は…｣
｢予定より早く進めている。お前の穴は大先生とお前の部下できっちり埋まっているぞ｣
｢…そうですか｣

そこでふと思い出す
なぜ、ここにいるのかを

｢コネシマさんは！？｣
｢おお…、落ち着きや。ショッピ君のおかげで無事やで。ピンピンしとるわ｣
｢そ、…すか。｣

そうや、俺は、敵の戦闘機を一機逃して
そいつが母艦に、玉砕覚悟で突っ込んでって
丁度そこに、コネシマさんが出てきてるのが見えて

｢なに命粗末にしてんねん！って言いたいとこやけど、ショッピ君のおかげでコネシマも船も無事やし、ショッピ君も大した怪我やなかった。ぶつかったのに片翼折れただけでその後不時着できたんは流石やな｣
｢…死ぬつもりは、なかったんで｣

沈黙がおりた医務室
チーノが無言で近付いて来たかと思うと、俺にデコピンをした

｢い゛っ…！｣
｢あかんぞ。戦線復帰はしんぺいさんの許可おりてへんからな｣
｢チーノさん、そこは…！｣
｢なに？エミさん。あ…、ごめん｣

こいつ、包帯巻いてるとこやってきよった…！

『大丈夫ですか？』

頭を抱えて悶えていると、きゅっと控えめに手を握り返された

Aさんって、こんな他人の心配する人やっけ
俺が知らん間に変わっていってるんかな
誰かの影響、受けてるんかな

彼女の世界に俺以外の人間がいると考えただけで、喉の奥を引っ掻くような憎悪がわいてくる
なんでや、Aさんが成長すんのは、喜ばしいことってわかっとんのに

俺、ほんまどうしたんや

『ショッピさん？』
｢ショッピ？｣
｢大丈夫か？｣

｢だ、いじょうぶっす｣

いろんな色の目が、俺を覗き込む
その中に、大好きなモノクロを見つけるだけで
頭の痛みも喉の気持ち悪さも消え去った

｢敵さんももう余力ないやろし、今回はショッピ君離脱したまんまでええよ｣
｢ペ神も終戦まで帰らないしな｣
｢はい｣

戦線離脱
その命令を受け入れるのは、案外容易かった

何か変や
何か足りひん

心に大きな、穴があいたような