狂愛方程式【3】 (ページ30)

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「負けてもた～」
「おかえりゾムさん、意外と悔しくなさそうやな」
「めーっちゃ悔しいで？でも楽しかったからプラマイゼロや」

あのえぐい殺気を出していたとは思えない緩い雰囲気
ゾムもAちゃんも、普通にしてればただの美男美女やのに

「大先生、殴っていい？」
「なんで！？理不尽な暴力ですか！？」
「俺を慰めてぇや、体で。得意やろ？」
「それただのサンドバッグっす兄貴…」

さっきはああ言ってたけど、本当のところは悔しんだろう
武器の得手不得手はあるにせよ、部下となった彼女に負けてしまったことに変わりはない
それに

「はーーーー。かっこわる…」

好きな子に負けるというのはどう頑張ってもかっこがつかないもんだ

「Aちゃん負けず嫌いやなぁ。ばっちり研究されてたやん」
「きれーにやられたな。ナイフ逆手に持つとこまで再現されたわ」
「挑発までして、ゾムさんの扱いわかってんなあ」
「くっそ、楽しんどったらひっかかってもたー！さすがだぜA」
「ここに至っても褒めるんか。べた惚れですねえ旦那」
「あいつだけやで、こんな楽しましてくれんの」
「…ゾムはさ、Aちゃんが好きなん？女の子として」

ゾムは少し黙った

「すきやで。俺にはAしかおらんって思っとる。
綺麗で、かっこよくて、かわええ。
…大先生も好きなんやろ？」
「そうやね」

きっとゾムの愛と俺の愛は全然違う
可哀そうなAちゃん
人と関わらんと生きてきたのに、いきなりこんな奴らの中に放り込まれて
それぞれがそれぞれの愛を囁く

「あんな綺麗な子、他におらんわ」

彼女なら、壊れて散ってしまう姿まで綺麗に違いない
俺は欲深い男やから、君の全部を魅たいんよ

「最近のA、前より狼感出てると思わへん？」
「お、おおかみかん？美味しそうなミカンやね、？」

べしっと頭を叩かれ脳みそが揺れた
兄貴、戦闘終わりで力加減間違えてませんか

「欲に忠実やし、機嫌とかわかりやすいし、強いやろ？」
「たしかに？そうなんかもな」
「白狼ってかっこええなーと思っとったけど、ほんまあいつによう似合うわ」

ニシニシ笑うゾム
視線の先ではげどちゃんが初戦を突破していた

いいんかなあゾムさん
狼って犬と同族やろ？
せやったら、誰かにしっぽ振ってまうかもよ

「あ、A出てきた。勝てよー！」

例えば、俺とか

その言葉は胸にしまって試合を見る体勢に入った
準決勝
Aちゃんの相手は
先程コネシマをたおしたこの国最強の書記長だ