狂愛方程式【3】 (ページ26)

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「Aさん、ほんまに出るんすか？」
『はい、私が頼んだことなので』

出場者でもないのに堂々と控室にいるショッピさん
幹部は皆シードらしい

「まだAさんのことちゃんと認識してない一般兵多いんすよ。わざわざ出ていかんでも」

彼の言いたいことはわかる
この前の、情報が漏れていた件で警戒しているんだろう

「あんたのこと知ってる男増やさんといてくださいよ…ただでさえ美人やのに」
『男か女か、情報漏洩に関係ありますか？』
「…そのへんアホなとこも、好きです」
『は？』
「ブフッ、残念やったなー！ショッピ！」

どこからか出てきたゾムさんは私に絡みつく
近い

『何の用ですか』
「挨拶やん挨拶！短剣どうしなかよしよ！」
『…あなたが短剣に持ち替えてまで出場する必要あったんですか？』

今回幹部で出場するのは歴代優勝者のひとらんさん、オスマンさん、トントンさん
コネシマさんも出場すると聞いている
半数以上が文官であることに疑問を感じざるを得ない
まあ、重火器が主流となりつつある現代の戦場で考えれば妥当かもしれないけれど

そして急遽ゾムさんの参加が決まった
おかげで予選からの勝ち上がり枠が減って、予選組からの悲鳴が聞こえるようだった
この軍は実力社会。いい成績を残せば、それなりの待遇と活躍の場が待っている

「予選勝ち上がったんは陸軍から３人、海軍から１人、特殊部隊から２人らしいっすよ。これ以上特殊部隊いらないんでゾムさん帰ってください」
「なんや空軍の僻みか？ショッピ副総監」
「空で剣とか使わんのですわ」

煽りあう２人を放って肩関節をほぐす
ケガは完治しているはず、しばらく使っていなかった違和感が拭えない

＿「Aちゃんも出るの？」
＿『はい。トーナメント表の反対側でしたよ』
＿「そっか」
＿『…あの時できなかった分、お手合わせ願いたいですね』
＿「じゃあ…、俺が刀の怖さ、教えてあげる」

大会前、顔を合わせた彼の眼はぞっとするほど澄んでいた
最近認めた、戦闘への好奇心が疼く

『決勝、』

そこが彼と私に用意された唯一のステージだ
一度の敗北も許されない
負けても命は取られないにしろ、あのチャンスを逃すのは
今の私に耐えられそうにない

「A、ええ眼しとんなあ」

ゾムさんの瞳に写る私は、彼と同じようにギラついた眼をしていて
やっぱり、この人と同種なのかもしれない

この、味方最大の脅威と

「さ、行こか！呼ばれたで！」

初戦の相手は、ゾムさんだ