狂愛方程式【3】 (ページ25)

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まさか本当にやるとは
いや、あの総統ならやりかねないのはわかっていた
戦後処理もだいぶ落ち着いて平常時のように戻りつつある軍内
訓練場の入り口に立てかけられた看板を見て、溜息がもれた

【剣闘大会】

やるならもっと早く言ってよ、ちょっとは体動かしてきたのに

「ひとらん、お疲れ」
「お疲れトントン。急だね」
「グルさんの思い付きやからな。おかげで今日の仕事は全部ストップや。」

トントンは恨めしそうに観客席を見やる
一番見やすい中央の席で酒を片手に盛り上がっているグルッペン
昼から飲んでんのかよ、戦闘を肴に

あいつはやっぱり頭おかしいな、と再確認してから
愛刀の握り具合を確かめた

「戦争終わったらやる？みたいな話してたけど、あれ俺とAちゃん以外にした？」
「そのAが今回提案したらしいで。」
「うそ、意外」
「…任務とか出るようなるから、腕上げたいんとちゃうかな」

そう言うトントンはちょっと寂しげだ
話題を変えたい
久しぶりに戦うなら、もう少し気分を高めとかないと
他のやつらにのまれることになる

「短剣って出場資格あったんだね、ゾムのナイフがアウトだからダメかと思った」
「一応剣やからセーフ、やって。審判が言うとったで」

今回の審判はシャオちゃんらしい
既に会場のど真ん中で行われる予選を楽しそうに眺めている
…いや、口も出してるな。煽ってくる審判とか最悪じゃん
可哀そうに、シャオロンにけしかけられた彼の部下は焦ってしまい
コネシマのとこの若手に負けてしまった
まあこうやって陸軍以外から上位者が出ることもある

「あ、トント～ン。ひとらんもお揃いやん」
「オスマンも出るの？」
「当たり前やん、前回の仮りを返さんと！」

にっこり、書記長を見て笑う外交官
両者の手には長剣
前々回の優勝者はオスマン、前回は決勝でトントンがオスマンを紙一重で降した
俺はこの２人が出るようになるまでずっと優勝してたけど、前々回は審判だったし前回は病欠だ
本気のこいつらと剣を交えるのは随分久しぶりになる

「オスマン、俺を忘れてない？順当に勝ち進んだらトントンより先に準決で俺に当たるけど？」
「やだひとらん、俺ら体の相性ばっちりやん？」

綺麗にウインクをされて殺意が湧いた
確かに俺はオスマンの剣技が苦手
1方向にしか切れない刀を上手くいなされてしまう

「…今回は、勝つから」

負けられない
だって彼女との待ち合わせ場所は決勝だから