狂愛方程式【3】 (ページ24)

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まだ新しいドッグタグは冷たく、見た目以上に重く感じた

「潜入任務の際携帯は許可されない。それ以外の時はつけておけ」
『…はい。』

数十グラムのそれが、私の生きた証拠
服の下、今首にかかっている重さが、ゾムさんの生きている証拠
この国に所属する、この人たちの仲間として存在する、証拠

「重いか？」
『はい』
「…なら、その重さを忘れるな」

タグを握った右手をグルッペンさんの左手が包み込む
優しく、手離せないように
ぎゅっと

ああ、本当に仲間になってしまったんだ
この人たちの一部になったんだ
騒がしく、自分勝手で、明るく、優しい

『グルッペンさん』
「なんだ？」
『私今、どんな顔してますか？』
「…笑っているようにみえるな。嬉しそうに」
『そうですね、これはきっと、ゲームでは味わえない感情だったんでしょう』
「これから何度でも味わえるぞ、俺たちといればな」
「せやで！」

横から伸びた腕が腰に巻きつく
前髪の影さえも近すぎて隠せないほど至近距離にある翡翠が視界いっぱいに広がった

「やーっときてくれた。A、一緒に楽しもな？」

私の首元、ゾムさんのタグをつなぐチェーンにこっそり落とされるキス
「おそろいやで」と、妖しく笑う姿は
また知らない感覚を呼び起こす

「おい、離れろやお前ら」

両腕をつかんで二人から引きはがされ、いつも高い位置にある視線が合わされた
トントンさんとしっかり目が合うのは、私に剣を捨てろと言った時以来か

「A…」

私の名を呼ぶトントンさんは、悲しそうだった

『すみません、あなたの思い通りにならなくて』
「…いや、Aが、満足してるなら、ええねん。俺のやり方がちがっとったんや。
でも、お願いがある」
『仕事に支障のない範囲なら聞きますが』
「そういうとこは変わらんな。
あんな、絶対死なんとって。重くてしんどなったら、それ外してええから。絶対自分捨てるようなことせんとってな」
『心身ともに、危なくなったら立場を捨てて逃げろと？』
「前も言ったけど、俺はAに普通の幸せを知ってほしい。それを犠牲にしてまで動いて欲しくない。」

＿＿「俺が君に、マトモを、教えたろうと思って、やのにずっと君は、俺の手からすり抜けていく。こんな大事に、思っとったのに」

いつかの彼とよく似た表情
そんなに辛いなら、私にかまうのをやめればいいのに

ああでも、あなたを苦しめていることに罪悪感を感じるようにしてくれたのは
マトモを教えてくれたあなたなのだろう