狂愛方程式【3】 (ページ18)

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カチャリ
カップとソーサーにぶつかる音が鳴る

「お菓子、クッキーとマーマレードどっちがいい？」
『どちらでも』
「じゃあどっちもにしよ～」

オスマンさんの私室は品のある装飾と遊び心の混じったデザインで彩られていて
その手のことに疎い私でもわかる「センスのいい」部屋だった
紅茶をいれ対面のソファに腰掛けたオスマンさんは
紅茶を味わいながらゆったりと問い始める

「あの元首相が言ってた組織、どう思う？」
『そこまでの力があったようにも思えません。記憶を消すという薬はゾムさんと取りに行った際には売人が回収していたようです。
推測ですが、その売人が情報の出所かと。』
「せやろな～。」
『…あなたは、何が聞きたかったんです？そのことを聞くために連れてきたわけではないでしょう』

紅茶の薄れていく湯気を見ながら、目の前の外交官の様子をうかがう
今彼の眼を見たら、すべての動揺が見抜かれそうで

オスマンさんは紅茶にたっぷりの砂糖をいれて、ティースプーンをひとなめした
赤い舌を見せつけるみたいに

「恋バナしたっくて！」
『…失礼します。』
「エミさんはなんで君の事好きか知ってる？」
『知りませんしエーミールさんがそのような感情をお持ちだとは考えられません。ではこれで』
「Aちゃん、このままやったらエミさんのいいようにされてまうで」
『…それならそれで、別に』
「ほらそれ、エミさんのこと信用してもうてるやん」

ここの人のことは一通り信頼はしているつもりだ
なぜ彼だけ

「あいつ、人の思考回路とかいじんの好きやねんで？
Aちゃんが操られてたトリック見つけたのもエミさんやし」
『…だから何なんですか』
「尋問にAちゃん呼んだ理由、なんやと思う？」
『私の情報を探るためでしょう』
「それだけ？エミさんの言ってたこと、言ってみ？」

何をそんなに追及しているのかわからない
エーミールさんは真っ当な理由で私を呼んだし、
特におかしい言動をしていたわけではない

しかしオスマンさんは一見深刻そうな表情で、手をぎゅっと握ってきた
その深い緑の底に、悦楽を隠しながら

「全部教えて？俺に。Aちゃんのもやもやも全部、解決してあげるから」

セキュリティルームからでなければよかったと思った
使い慣れない、理論的に表せない感情というものを
こんなにも揺さぶられるのなら

『まず、＿＿』

言葉を導くように、外交官は手の甲をなぞった