狂愛方程式【3】 (ページ12)

今日:4 hit、昨日:2 hit、合計:27,815 hit

112 ページ12

「Aさん、少しよろしいですか？」

戦後処理の真最中、１国分増えた情報をロボロさんと既存プログラムに組み込んでいる最中
エーミールさんが訪ねてきた
戦時中は度々前線指揮のためやって来ていたけど、今ここに何の用が。しかも私に

声は出さず目だけで返事をすると、彼はおだやかに話し始めた

「もしよろしければ、尋問会にご同席願えませんか？そろそろ地下にいらっしゃるベディノンの元官僚の方々の処遇を決めさせていただかないといけないのです。」
『…』
「エミさん、それA必要か？こっちも忙しいねんけど」

答えない私に代わってロボロさんが応じた

「できることなら情報を扱うプロとしてのご意見を頂戴したいのです。法の知識ばかりの私では尋問に差し支えるかもしれません。今回Aさんは国の深部まで探っていただいていたと思いますし、是非ご同席を。…ダメでしょうか？」

あまり彼のことを知っているわけではないが、随分したたかな目つきをしている
国の法を扱うトップとしてそう頼むのであればロボロさんも断り辛いだろう
はたしてこれは本当にお願いなのだろうか
命令の間違いでは？

『わかりました』
「A、ええの？」
『はい』
「ありがとうございます、Aさん！」

私は別に、元敵国の人間に興味があるわけでも情報が知りたいわけでもない

＿＿「一緒におりたいんです。だめですか？」

彼から逃げるためだと、誰にでもなく言い訳をしている時点で察する

意外とこの人たちに絆されているのかもしれない
これはコネシマさんの思い通りの結果なのだろうか

「では地下牢に行きましょうか」
『…』
「Aさん？」
『なんでもありません』

地下牢という単語で体が震えたことに驚いた
まさか、怖がってる？
恐怖にすら興味がなかったのに

「…やはり、お辛いですか？」

察したように眉尻を下げ、小さく声をかけてくる彼に『大丈夫です』と一言返した

感情や興味はどうやって発達するものなのか
発達させるべきものなのか

『めんどくさい…』
「なにか、おっしゃいました？」
『いえ。』

きっとめんどうごとが増えるだけ
ここに来て楽しみも増えたけど面倒ごとも増えた。主に対人方面で

「何かあればおっしゃってくださいね、尋問中でもかまいませんので」

感情に質量があるなら、間違いなく重くなっていっていると自覚している

『…ありがとう、ございます』

0と1で表せないものは難しい
だから、彼が何を企んでいるのかもわからなかった