狂愛方程式

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初めて人を殺したのは、13の時やったと思う
飛び散る血を見ながら｢人ってこんな簡単に死ぬんかぁ｣って、罪悪感なんかなかった。

俺は物心ついたときから1人で、親は死んだのかも俺を捨てたのかもわからない。人の食べ物や金を盗んで生きて、闘い方を育ちながら学んだ。

自分が何のために生きてるのかはわからんけど、命がけで闘ってる時は｢生きてる！｣て思えて。その命を狩りとることが楽しくてしょうがない。
グルッペン達に会うまでは、それだけが俺の生きがいやった。


｢俺が勝ったら毎食、食堂で俺らと飯食う。負けたら…なんでもええわ。何か1個言うこと聞いたる！｣

コイツはきっと、俺と闘(や)ってくれる
だって俺と同じやねんから
だから賭けの中身なんてどうでもよかった
とにかくコイツと、殺意をぶつけ合いたくて

最初はダルそうに、めんどくさそーに俺に付き合うと言ったくせに、いざ始まるとその口は弧を描いた

｢なんや、やっぱお前乗り気やん！｣
『そんなわけ、ないでしょ、っと』

目の前を短剣が横切る
寸前に投げたナイフはもう1本の剣で弾かれたようだ

｢ヒヒッ、危ないわぁ〜！死んでまうやん！｣
『人の顔に向かって刃物投げないでもらえますか』
｢自分ええなぁ！ハッカーなんか辞めてうちの隊おいでや！｣
『私からゲームを取ったら、何も残りませんよ…！』

みんな、コイツは空っぽやって言う
ハッキングにしか興味無いって
なんでぇや

今、目の前でめっちゃ楽しそうに殺気振りまいとるやんけ

｢おお！？なにそれめっちゃすごいやん！｣
『余裕なクセに…』

俺が力を乗せて振り下ろしたナイフ
受け止めれば押し負ける、躱せば体勢を崩す
その状況でコイツは、二振りの剣を俺のナイフに添えて受け流した
タイミング・角度・力加減
全てが完璧で、思わず賞賛してしまう

勢いのまま繰り出してくる蹴りに1歩下がると、お返しと言わんばかりに短剣が振り下ろされた

｢んひ、お前のは力が足らんわ｣
『チッ…』

ナイフを逆手に持ち力任せに振り上げれば、コイツの手から短剣が吹き飛んだ

｢俺の勝ちやな！｣

首元にナイフを突き付けて笑う
諦めて両手を上げる姿の後ろに、2本の剣がカランと落ちた





あれから何度も思い出す
あの笑顔、あの殺気、輝く目
あんな楽しそうに闘うやつが、ハッキング以外興味無いわけない

アイツの奥底にあるのは、俺と同じ狂気や

｢な、A｣

誰もいない廊下で、初めて覚えた女の名前を口にした

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