4 ページ4
『紳士なんだね、グルッペン君』
そいつは確信を持って振り返った
背中に目でもついてるのかというほど、俺の外した視線の先に正確に現れる
『逸らしたってことは、見えてるんでしょ？』
目線を繋げたまま、ニコリと綺麗に笑う幽霊に溜息が出た
「幽霊やねんから朝は自重しろや」
『地縛霊だって言ってるでしょ。
学校内なら何時だっていいの！』
「学校内で話しかけてくるのやめろ。
虚空に向かって話す俺がヤバい奴に見える。」
『学校内じゃなかったらいいんだ、グルッペン君優しいね…』
「ああ。お前は校外に出てこれないなら安心だ」
『Aって呼んでよ』
この地縛霊、アホなんか
どことなく噛み合わない会話をしながら教室に向かい扉を開ければ、朝っぱらから女子の暑苦しい視線と馴染みの「おはようグルさん」という声がする
「おはようトン氏」
「なんや、昨日オスマンとなんか食いにいったくせに機嫌悪いな」
「そうか？」
『あ、書記長のトントン君だ。彼もイケメンだよね。
グルッペン君とはまた違う方向で。』
「朝から眉間にしわ寄せとったら癖なりますよ」
『そうそう、もうちょっと私とにこやかに話してくれてもいいのに。昨日は美しいとか言ってくれたのになぁ』
「うるせぇ」
ばばくさいことを言い出すトントンと、その横に立ってうんうんと首を振る地縛霊
というか、普通にこの教室の人間には彼女が見えていないらしい
濃紺セーラーの美不審者が混じっていて強烈な違和感を放つ中、朝のホームルームが始まる
教壇に腰掛けてニコニコ教室を見渡す彼女は、なぜか馴染んでいるように見えた
＿＿『１８年も待ったんだよ、やっとあなたが見てくれたの。』
もしかしたら彼女は、１８年間こうして、後輩たちを眺めてきたのだろうか
誰からも相手にされず、誰からも認識されず
ひら、と白い手が揺れた
黒板からそちらに目を移すと、嬉しそうにいっそう大きく振られる手
口角が上がった口元には、小さな小さなかたえくぼができている
可愛らしく笑う彼女がなぜ成仏できないのかわからない
会話から察するに、恋愛絡みなんだろうが
あの容姿なら男はいくらでも寄ってくるだろうに
何か反応が欲しいのか手を振り続ける影に、小さく頷いておいた
それだけでにぱっと音が聞こえるような、口をあげた笑顔に変わる
次の瞬間、彼女の顔面の右側に担任の肘がめり込んだ
ぞっとする光景に、俺はそっと目を離した
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 38人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
すみれいん(プロフ) - レックさん» お返事遅くなってしまいました…すいません…。作品を読み返すたびなぜお星様は一回しかいせないのかと唸っております！パティシエのお話が好きすぎて、もう大好きです！ (2020年9月15日 20時) (
レス) id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
レック(プロフ) - すみれいんさん» まだ始まったばかりですが、これからも楽しんで頂けるよう頑張ります。いつもご感想ありがとうございます！ (2020年8月31日 19時) (レス) id: 2fb85be95a (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - ２話で既に私の心臓キュッとなりました、ありがとうございます！ (2020年8月31日 7時) (レス) id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：レック | 作者ホームページ：https://mobile.twitter.com/home
作成日時：2020年8月31日 1時
