西侍の短編集【Part2】 (ページ35)

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「あ、時間や」

プレイルームの壁にかかっている時計をチラッと見ると、時針は3を、分針はちょうど12を差していた。

「えっ、うそやろシゲ！」

「ほんまや、今日はここでおしまい。」

ここは、総合病院。

小さな子供から俺みたいな奴まで、病気が良くなるか、死ぬまでの間面倒を見てくれるところ。

そうやな、俺はここにきてもう2年くらい経った。

今年、18才。

成人の歳や。

「いやな、俺、3時から検査やねん」

「えーっ、ええやん、ちょっとくらい！最後まで読んでや！」

「無理無理。あ、ほなこれ自分で読むか？この本俺のやから、貸したるわ」

「ムリムリ、こないたくさん字があるもん、読んでられへんわ」

「はっ、やろーな」

駄々をこねる男の子、…智を、適当にあしらう。
ませとるから俺の考えなんて全部わかってて、あしらえたことはないねんけど。

この子は今小学5年生で、半年前にこの病院にきた。
妙に大人びとって、物分かりいい。

ちょっと頑固やけど、そこもかわええというか。

「検査の時間に病室におらな、担当医のお化けが俺に怒るねん！コラッ！！って」

「あー、はまちゃんセンセ？」

「違う、あれは化け物や、先生なんかやない。あーうらやめしや〜」

神ちゃんの狭いお腹や脇を突きながら、冗談を吐かす。
分針は、5を差した。

「だぁれが化け物やって？シゲちゃん？」

ひょこ、っと俺の真隣りから顔を出して肩を組んできた濵ちゃん。

ふわふわ、いやボサボサな髪の毛に、縁の細い丸眼鏡。

綺麗に整った白衣を見に纏った、この病院で唯一、こんなめんどくさい俺の担当に名乗り出た先生。

「ほら、行こう？神ちゃんごめんな、白雪姫読んでもらってたんやんな。お詫びにあとで俺が読んだるわ」

「え、いらん、シゲがいい」

「……んふぅ、なんでぇ…」

優しくて、ちょっと抜けてて、癒しキャラ。

それが、濵ちゃん。