足りない言葉は風にきけ１【リヴァイ】 (ページ7)

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あ･･･

あたしも何者なのか知りたがってる･･･

そう気づき、心の中で少し苦笑いする。

リ「さっきの男たちの襲い方は奇襲だろう。なぜあの1発目を、読んだようによけられたんだ」

「簡単よ。あれは結果として奇襲とは言わない。相手に触れる前に声を出してる。それじゃ相手に襲うぞって言ってるようなもんよ。あんなのは奇襲でも何でもない」

リ「ほう･･･」

「どうして助けたの？」

リ「理由が必要か。お前も今日誰か助けたんじゃないのか。何か理由があったのか」

「あぁ･･･あの子たちのことか。あんたもつけてたの？いい趣味じゃないね」

リ「そうだな」

つけてたってことは、隠している何らかの目的があるはず。

だけどそれをあっさりと認めた･･･

なんだろう･･･

自分の中の警戒が、簡単にとけて行く感覚がした。

ありえない･･･初対面の、今ちょっとだけ言葉をかわしただけの人間に。

身を守るための観察眼には自信があるつもりだ。

でも少なくとも、この人には、今この瞬間あたしの何かをおびやかすものは感じられない。

リ「仕事は何をしている」

答えることに少し躊躇した。

何が目的なの･･･？

『相手の手のうちを探るためには、ある程度こちらのことを明かさねばならない』

大昔にある人から教わった言葉を思い出した。

目の前のこの人物には、とくにそれが有効な気がした。

ヘタな駆け引きは通用しない、そんな空気が感じられる。

「･････調教師」

その人はすぐそばにある馬小屋のほうへ、視線を向けた。

リ「あの馬小屋のか」

「そう」

落ち着き払った物腰だけど、深くかぶった帽子のひさしの下で光る瞳は、鋭い。

そしてどこからか漂う確固たる自信。

こんな空気の人間を見るのは何年か振り･･･

･･･尊敬していたあの人に似た空気だ。

エルヴィン･･･････

「･･･さっきは･･ありがとう」

あたしは自然とそう言っていた。

なつかしい彼の名を胸の中でつぶやいた瞬間、急に素直な気持ちが押し寄せた。

その人は黙って立ち上がり、馬小屋のほうへゆっくりと歩き出した。

そして、ついて来ないあたしを振りかえり、静かに言った。

リ「馬を見せてくれ」

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