足りない言葉は風にきけ１【リヴァイ】 (ページ36)

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ここって･･

フォルカーさんの娘さんの部屋だったかもしれないな･･･

窓にかけられた繊細なレースのカーテン、

出窓のはしっこに置かれた小さな花瓶、

部屋の入り口にある鏡･･･

室内に派手な色合いはないけど、部屋の雰囲気が、「女性」を物語っている気がして･･･

ここで、いろんな景色を見ていたんだろうか･･･

季節の花を愛でたり、冬のきれいな星空とか、今日みたいな雨の日も･･･

「ここ、きれいな月が見れそうだね･･･」

小さな声で、フォルカーさんの娘さんに話しかける。

そっか･･･

この家が町から距離があるのは、娘さんの喘息のためだったんじゃないか、そんな気がした。

きっと、ここのきれいな空気の中に身をおいて、療養してたのね。

どんな気持ちでいたんだろう。

皆が自分の身体をいたわってくれるのに、自分は鳥かごの中にいるような窮屈さを感じてしまう、そんな矛盾とか、なかったんだろうか･･･

あたしは･･･そういうのを時々感じてた。

雨の景色をぼんやりと眺めながら、さっき見た写真の中の娘さんの顔を思い出そうとした。

ダメだ、さっき見たばかりなのに、血痕に気を取られていたせいで全然思い出せない。

弱くなっちゃたな･･･

血痕ぐらいで動揺するなんて。

調査兵団にいた頃は、血痕どころか、まだぬくもりを帯びた仲間の鮮血を、どれだけこの身に浴びたことか･･･

３年という月日は、人を変えるのに充分な時間なのかもしれない･･･

エルヴィン、あなたはどう･･･？

何か、変わった？

お姉ちゃんのことは、もう忘れた･･･？

大切な人を失いそうな恐怖心を、

大切な人の死で訪れる後悔や絶望を、

人は、強くなれば･･･捨てることができるの？

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