足りない言葉は風にきけ１【リヴァイ】 (ページ31)

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フ「発作じゃな･･････」

フォルカーさんが、あたしの背中をさすってくれる。

幸い、この家のキッチンとダイニングは扉で仕切られ、雨の音が激しいせいでダイニングにいるリヴァイの耳には届いていないみたいだ。

「ひゅぅ･･･ひゅぅ･･････ひゅぅ･･･」

呼吸を整えようとするけど、一度収縮し始めた気管支は、薬の力を借りないと拡げることは難しい。

フ「Aさん、わしの娘も喘息をもっていたんじゃ。薬は？持って来ているんじゃろ？」

あたしは首の上下の動きで返事をする。

フ「カバンをこちらに運ぼう。彼も呼んで」

そう言って立ち上がったフォルカーさんの腕を、あたしは慌ててつかむ。

振り返ったフォルカーさんに、今度は首を左右に動かし『やめて』の意を伝える。

フ「なぜ･･･」

「･････ごめんなさ･･････リヴァイは････知ら･･･ないの」

ひゅうひゅうと、喘息特有の呼吸音が会話に混じって話しにくい。

フ「しかし･････悪化したらえらいことじゃぞ」

「お願い･･･します･･････カバンだけ･･ここへ････」

フォルカーさんは困った表情で荒い呼吸のあたしを一瞬見つめたあと、大きくため息をついた。

フ「なんとかしよう」

フォルカーさんがキッチンを出る。

カバンさえここに来れば･･･薬で落ち着かせることができる。

フォルカーさん･･･リヴァイにバレないようになんとか･･･

お願い･･･

せめて、入団をエルヴィンに認めてもらうまでは、リヴァイには知られたくない･･･

苦しい呼吸の中で、あたしはめいっぱい頭を回転させた。

ここでリヴァイにバレて追い返されたら、あたしは･･･

入団のチャンスを掴むには、ここで薬を飲むしかない。

早く･･･苦しいよ･･･

･･･フォルカーさん、お願い･･･早く･･･

目を閉じてうずくまり、祈りながらフォルカーさんを待つ。

カチャ･･･

少しして、キッチンの扉が開く音がした。

*