足りない言葉は風にきけ１【リヴァイ】 (ページ11)

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調教師の仕事は毎日の馬の世話と、健康管理、そしてトレーニング。

馬にも個性や能力の違いがそれぞれにある。

1頭1頭に合った最適なトレーニングをプログラムすることも重要な役割。

そのために、毎日1頭ずつしっかり観察することは、絶対はずせない大切な仕事だ。

いつもはすべての馬を見回り終えたら、事務室にいるイザークのもとへ報告に行く。

今日はあの人･･･アッカーマンだっけ、と一緒にここにいるから、両腕を自分の頭上にあげて丸を作り、少し遠い梁の上からイザークに『問題なし』のサインを出す。

イ「A―！今日はおれが日報書いといてやるよ！大事をとってもう休めー！」

あたしのサインに気づいたイザークが、口元に手を当てて大声で答える。

イザークは優しい。

あたしがここに来たときからずっと。

よそから来たあたしを、何も言わずに受け入れてくれた。

「りょーかぁーい」

問題はなかったから、今日は甘えてしまおう。

それに･･･

なぜあたしをつけてきたのか、アッカーマンを問いただそうと思った。

梁から降り、イザークのところへ戻る。

「イザーク、あたしがいつも使ってるペンがないの。土手で転んだときに落としたかもしれない･･･ちょっと探しに行ってくる」

イ「え、マジか･･･けど、休んでたほうがよくねぇか？」

「でも、あれ･･･、あたしの大切なやつって知ってるでしょ？少しの時間だけだから」

イ「わかったよ」

「お聞きの通り、あたしの仕事、今日は終わり。助けてくれてありがとう」

あたしはアッカーマンに向きなおって、頭を下げた。

リ「見せてもらってよかった。こちらこそ礼を言う。じゃあこれで失礼する」

彼は持っていたカップをイザークへ返し、小屋から出て行った。

イ「なんか、ちょっと変わった人だったな。カップの持ち方も、こんな風にさ･･･」

あたしは、イザークの言葉を半分聞き流していた。

確かめなきゃ。

つけてきておいて、あっさりと何も言わずに去っていくわけがない。

さっきの会話を察していれば、「何か」のためにきっと近くで待ってるはず。

あたしはなぜかそう確信していた。

そして、その「何か」は絶対に聞くべきことなのだと、強く導かれる不思議な引力を持っていた。

「イザーク、ありがとね、あとをよろしく･･･」

あたしはストールを羽織って、すぐにアッカーマンのあとを追った。

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