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第33話〜Blaue Rose〜 ページ36

月が近い。

手を伸ばせば届きそうな程に。

「珱ちゃん、もうすぐ王の所に着くよ」

緊張した颯天の声が聴こえる。
近い。

色々と近い。

眼前に広がるのは城のように彫られた岩壁がある。

月が紅い。
そう感じる。

「本当に、この中に……!」

心臓が痛い。

緊張する。

岩壁に触れ、降りる。

脚が震えて歩けない。
喉が乾いて声が出ない。

そんな私の背中を颯天が優しく擦る。

「大丈夫だよ、僕がいるから、辛かったら言ってね」

ありがとう、と呟き、歩みを進める。

紅い蝋燭の灯りが廊下を照らす。

「綺麗……」

コツ、コツ。
足音が響いて、奥へ消えていく。

無駄な程長い廊下の奥に大きな扉があった。

ここを開ければ王が!

「珱ちゃん、深呼吸して、行くよ……!」

重い音がして扉が開く、颯天の視線の先には堂々と脚を組む男性がいた。

目付きは鋭く、紅い髪が燃えるように輝いている。

「誰だ、お前達は……って、颯天じゃないか」

王は颯天の事を知っているようで、気付かなかったが、隠れていた護衛の人を払うと、私達を床へ正座させた。

なんか、偉そうな人だな……

そんな思考を広げている私を睨み、指差すと颯天に問う。

「この女はなんだ?お前の女か?」

クツクツと含んだ笑いを溢しながら目元を歪めた。

しばらく笑うと、咳払いをして、改めて話し始めた。

「からかってすまない、()の名前は紅月 康弥、吸血鬼の王だ、我の元へ来たという事は何か困り事か?」

そう言って、私を睨む。

颯天も背中を押した。

『君が言いな』と言うように。

唾を飲み込む。

飲んでも飲んでも、喉がカラカラに乾いて苦しい。

でも、震えた声で告げた。

「人を、探してるんです……蒼い眼をした…」

「おい」

言葉を遮られ、驚いたように王を見る。

王の眼は、真剣だった。

「Blaue Rose……ドイツ語で蒼い薔薇、という意味だ、吸血鬼なのに蒼い眼をしていた気がするぞ」

心臓が揺れる。

きっとそうだ。

この人はあの人を知っている。



すると



嬉しさに痙攣する身体に水を掛けられたように冷えた。

王の言葉により。








「アイツは、女が嫌いだ」



悪魔のような寂びた声が脳を侵していく。

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ロリコンサンダー(仮) - うらみん PC垢さん» すみません!携帯とか成績とか精神が壊れていたせいで、更新が止まってしまい申し訳ございません。 (2019年11月25日 17時) (レス) id: 726db12174 (このIDを非表示/違反報告)
うらみん PC垢 - 更新楽しみに待ってます (2019年10月25日 20時) (レス) id: 57acaff2a1 (このIDを非表示/違反報告)
ロリコンサンダー - アエルさん» ありがとうございます……わ、わたしも……ポッ←すみませんwそういって頂けて嬉しいです! (2019年9月12日 18時) (レス) id: 6a276d2734 (このIDを非表示/違反報告)
ロリコンサンダー - しーずんぺろ子さん» そっ、それなぁ!?あ、ありがとうございます………(照) (2019年9月12日 18時) (レス) id: 6a276d2734 (このIDを非表示/違反報告)
ロリコンサンダー - べのむさん» え、えええええええええぇぇええええ!?!?!?!?ありがとうございますぅううう??? (2019年9月12日 18時) (レス) id: 6a276d2734 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:莉愛&ロリコンサンダー | 作者ホームページ:http:  
作成日時:2018年12月29日 11時

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