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 ルカはアレンと彼の家の軒先で話していた。アレンの家はルカの隣なのだ。空が曇っていて、湿っぽい日だった。

「アレン、もう修行先決めたって?」
「あぁ。金具工房のデレダンさんのとこ。ルカはまだなんだろ?」
「……」
「アハハ、なるほど」

 タニタ国の子供たちは、12歳頃になると修行先を見つける。将来働きたいと思った工房や施設、技術者などの下につき、力を養うのだ。十分な能力を持ったと認められれば正式な就職となる。

 ルカは12歳になったにも関わらず、まだ修行先を定められていなかった。

「いろんな人に言われてると思うけどさ、なんかやりたいこととかねぇの?」
「これっていうのがなくてさぁ」

 やっぱそうだよな、と言ってアレンは前を向いた。薄茶の細い髪が風に揺れている。彼はルカの幼馴染だった。粗雑な言動に反して大人っぽく、ルカは彼にこれまで色々なことを相談してきた。

 ルカがAと出会い、彼女との時間が増えていった時も、彼は大人だった。アレンと遊ぶ時間が目に見えて減り、後ろめたさを抱えたルカを笑い飛ばしたのだ。

『何遠慮してんだ、このバカ。オレたちはこれからも友達だよ。そのかわい子ちゃん、後でオレも会いたいな』

 正直ちょっと寂しいよ。でも家近いし好きな時にそっち行くから。その後にこう言ったのも上手かった。遠慮するなと言われただけでは自分はきっと負い目を感じたままだっただろうなとルカは最近になって思うようになった。アレンは上手にルカを甘やかす。

 そして今もまた、ルカはずっとアレンの優しさに甘え続けていた。

 しかし、アレンがこれまでAに会ったことは片手で数えられるほどしかない。何故だろう。

「なんならオレと同じところは? 志望理由はアレンくんがいるからですーって」
「それはダメでしょ」

 ルカが溜息をつくと、アレンがルカの頭に手を乗せた。ルカの黒い癖毛をもっとぐしゃぐしゃにするようにかき混ぜる。

「ルカは真面目だなぁ。いつか損するぜ」

 彼の顔が近づく。切れ長の目が細められ、口が優しげに弧を描いていく。

「……アレン? どうし——」

 ざわ、と心が騒いだ。アレンのもう片方の手がルカの頬に近づいてくるような。

「アハハッ。髪ボサボサじゃん」

 ぱっとアレンが手を離した。にやりとしてルカの頭を見る。

「誰のせいだと思ってんの!?」

 ごめんごめん、と手刀を切った彼は、ふと思い出したように宙を見た。

「あ、Aちゃんは今日どうしてんの?」

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だっふぃー(プロフ) - よるいろさん» 感想ありがとうございます!頑張って更新していくのでこれからも見てくださると嬉しいです! (8月8日 8時) (レス) @page3 id: cd3561a74c (このIDを非表示/違反報告)
よるいろ(プロフ) - 周りの状況や景色が目の前に浮かび上がるような文章でスラスラ読めてしまいました。更新楽しみに待っています、頑張ってください! (8月8日 6時) (レス) @page3 id: ed5fd984f6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:だっふぃー | 作成日時:2023年6月12日 23時

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