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「Aの家……? でも、迷惑なんじゃ……」
「一人暮らしだから、誰もいないよ。……だめ、なの?」
彼女の家。しかも、一人暮らしで他の住民はいない。
ぶわりと三ツ谷の心臓が燃えたように熱くなる。しかし脳内はどこか冷静で、付き合って初めてのデートで想像上のアレやそれが起こるはずも無いだろうと、自重を知らない欲求を叱る。
「だめじゃ、ないよ」
結局三ツ谷は、羽鳥の少し潤んだ上目遣いに逆らえなかった。羽鳥が可愛いのが悪いと誰にでもなく言い訳をするが、自分もまだ一緒にいたいと思っているからだと自分が一番理解していた。
羽鳥の家は綺麗なワンルームだった。物は少なめで少し簡素だが、そこらに飾られた小さくて可愛らしい小物が女の子の部屋を演出している。
羽鳥はくまのぬいぐるみをベッドの上に置くと、自身もそこに腰を降ろした。対照的に三ツ谷は、初めての女の子の部屋に内心ドギマギが止まらなかった。どこに座ればいいかもわからず、部屋の入口に立ちすくむ。
「何してるの? こっち」
「ん"、ああ、うん」
羽鳥の手が何度かベッドを叩く。隣に座れ、と言う意味だ。三ツ谷は煩悩をかき消すように咳払いをして、羽鳥の隣に腰を下ろす。
「かわいい部屋だな」
「そう? なんにもなくてごめんね」
「Aが居ればそれでいいよ」
「……うん、そうだよね」
控えめに室内を見回す三ツ谷。その視線が、棚の上の伏せられた写真立てで止まった。倒れてしまっているようだ。後で直してやろう。そんなことを考えていた時だ。
三ツ谷の肩に、とん、と衝撃が加わった。油断していた三ツ谷はいとも簡単にシーツに沈む。声を上げるより先に、三ツ谷の上に暗く影が差した。
「A……?」
羽鳥はにこりと微笑んで、三ツ谷の上に乗り上げる。押し倒されるような形になって、三ツ谷はひゅ、と息を飲んだ。
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綾鷹(プロフ) - どハマり中の作品!更新頑張ってください!!応援してます!!! (2021年8月17日 12時) (レス) id: 1e5c1477e1 (このIDを非表示/違反報告)
おかかのおにぎり(プロフ) - 初コメ失礼致します。すごく素敵な作品に出会えて大感激です…!三ツ谷のかっこよさと可愛さが全面に押し出されててめっちゃ好きです、、、これからも更新応援してます! (2021年8月17日 8時) (レス) id: bb984743a2 (このIDを非表示/違反報告)
まつあい(プロフ) - めちゃくちゃ好きです…泣 (2021年8月17日 5時) (レス) id: 616babd1d8 (このIDを非表示/違反報告)
愛月咲良(プロフ) - この作品に会えた事を感謝します… (2021年8月17日 4時) (レス) id: 4a6d894003 (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - 待ってなんでこの神作に早く出会わなかったの?私バカなの?((((喧しいわ (2021年8月17日 1時) (レス) id: 1a6dd63888 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:金蔓ゆるり | 作成日時:2021年8月16日 5時