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両親は激怒した。まあよく考えなくても当たり前だろう。大切に育てた駒がいつの間にか違うものになっているから。医者以外の道は許さないような育て方だったし。ただ思っていたよりも過激派だったらしく医者にならないならと家の物置に閉じ込められてるのが現状だ。
食事は届く。でも自由ではない。諦めれば多分見かけの自由は手に入れることが出来るだろうがそれは意味が無い。だから沈黙していつか来るはずの自由を待っている。
物理的にも精神的にも太陽の光が当たらないこの環境では弱く演じるのは難しくない。自分の夢さえ見失わなきゃきっとまた太陽に会えるから。
「おい、ここら辺で酔っ払いが乱闘して怪我人が10人近く出たから診てくれないか?」
「金にならないなら診る気はない。帰ってくれ。」
医者とは名ばかりの欲に塗れた両親は善良で診察しない。訪ねた男性と数分揉めた後警察からの要請でやっと重い腰を上げ、街へ出てった。
…千載一遇の好機がやって来た。両親は出払っていて街もそれだけの乱闘なら野次馬がそれなりにいるだろう。紛れるにはちょうどいい。
物置に閉じ込められてるとはいえ脳なしの馬鹿ではないためいつでも逃げれるように引き戸の奥に小石を挟んでいた。少し古い引き戸なので完全に締めないと鍵がかからない。なのに見た目はかかっているかのように見える。つまりは空いているのだ。
必要最低限の荷物を持ち、音を立てずに戸を開けて一目散に街へ逃げ出した。そこそこ栄えているこの街は大きい。人の流れ的に西の方で騒ぎが起きてるみたいなので東の方へ無心で走り続けた。
「おい、どこへ行く」
追ってきたのは弟だった。親の完全ないいなり、つまり『敵』だ。
『決まってるでしょ。家を出てやりたいことをする。あんたらの言いなりになんてならない。』
「姉貴のことなんて誰も応援しない。血に価値があるから殺されないだけで誰も必要としてない。」
昔はいい子だったのに…なんて同情する暇はない。とりあえず早くここから逃げなければ。
『私も家族からの応援なんて求めてない。奇遇だね、お互いにお互いを必要としてない。さよなら。』
これ以上は何も言い返されなかった。どこか悲しげな、そして憎悪の混じった表情で走る私を見続けた。
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作者名:熾架 | 作成日時:2021年1月29日 11時