検索窓
今日:13 hit、昨日:1 hit、合計:136,376 hit

33話 ページ35

まりん「…A?」


まりんは心配そうに
私の頭に乗せていた手を動かしたが
反射的にそれを振り払う

よろめきながら後ろに下がり
出入り口を探した


まりん「A」

A「…」

まりん「A!」

A「あ…」


大きな声で私の名前を呼んだまりんは
困惑と悲しみが混ざったような表情をしていた

反射的に私は涙を浮かべて
膝から崩れ落ちた


A「ごめ、ごめんなさい…ごめ、」

まりん「…ごめん、泣かないで。ごめんね、怖かったよね」


嗚咽を漏らしながら泣く私を
まりんは抱き寄せて落ち着かせようとしてくれた
…遺伝子的に母にあたる人は、絶対にしなかったことだ

両親は幼稚園の頃に離婚した
母に引き取られたが
私のせいで離婚したと母は連日叫んでいた

小学生に上がってから暴力が増えた
服を着たら見えない位置に
週に2、3回殴られた

中学生になってからは家出を繰り返した
父のもとにも行ったことがある
「なんとかするから、待っていてくれ」と
淡い期待だと、ずっと思っていた

高校に行くことを決めたとき、母には大反対され
1週間は学校にいけないように、家に閉じ込められ
毎日「しつけ」という名の暴力が振るわれた

その1週間の最終日
父が祖母と一緒に母を止めに来た
祖母が説得している間に荷物をまとめて
父の車に乗り込んだ

そこからは、暴力とは無縁だった
中学卒業までは父と暮らし
高校からは父方の祖母の家で暮らした
学費もすべて、父が負担してくれた
そして、祖母との別れなどがあり
いまに至る

ポツポツと語りだしたら、止まらなかった
ずっと誰かに、聞いてほしかった
まりんは、そんなウソのような話を
何も言わず黙って聞いていた


まりん「…Aが、生きててよかった」

A「……う…?」

まりん「だって、いま俺たちと会えてるのは…Aが生きてたからだし」

A「ずっとやりたいことが…これだし、意地でも生きていたかった」

まりん「動画投稿?」

A「そう、踊ってみた…」

まりん「そっか、ありがと。聞けて良かった」

A「うん…顔洗ってくる…!」


まりんの手がほどけ
私は立ち上がる
しゃがんでいるまりんは私を見て笑い出した


まりん「顔ぶっさwww」

A「うるさい!仕方ないじゃん!」

まりん「はいはいw行っておいで」


背中を押され、タオルを取ってスタジオを出る
全部言えたからか、とてもすっきりした気持ちだった

34話→←32話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (35 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
146人がお気に入り
設定タグ:アナタシア , 芝健 , 踊り手
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

(プロフ) - ムユさん» ありがとうございます!私もムユさんの作品みてますよ!楽しみにしてます!がんばってください! (2018年7月9日 15時) (レス) id: d507c4ecdc (このIDを非表示/違反報告)
ムユ - 彗さんの好きです!これからも頑張って下さい! (2018年7月9日 14時) (レス) id: 0352392d10 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - みいさん» わかります!尊い!可愛い!こちらこそ読んでいただきありがとうございます!! (2018年7月7日 22時) (レス) id: d507c4ecdc (このIDを非表示/違反報告)
みい - タシアが尊い!可愛い!大好き!作者も!ありがと! (2018年7月7日 21時) (レス) id: 5e0a50fdda (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名: | 作成日時:2018年7月3日 12時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。