【文スト】恋と帽子と包帯と。

16*紅潮と石像。 ページ16

そして翌日、約束の時刻。


遂に来た。来てしまった。


…中也さんと二人きりの潜入任務の時が。


首領とエリス嬢から頂いた淡い桜色の礼装(ドレス)を身に纏い、


自分の作業室の扉の前にて、１つ２つと大きく深呼吸をする。


心の準備ができていないせいで任務失敗とか本当に笑えないからね。


よし、もう一回深呼吸したら中也さんのところへ行こう。


風船みたいに膨らむくらい大きく息を吸ってー…



ガチャ



「よォ準備出来た…か……！？」



『ち、中也さん！？』


其の儘息を吐く事は叶わず、吸った息は全て驚きの声と共に外へ逃げていく。


ドアノブに手を掛け、扉を半開きにしている礼装(タキシード)姿のマフィア幹部と、


深呼吸をするポーズの儘冷や汗を流す其の補佐。


二人して石像のように固まって驚愕に目を見開いているのだから、


側から見たら滑稽極まる光景だろう。


其れが判ってても尚其の状態や表情しか出来ないのは、


突然の侵入者兼上司の叩敲なしでの訪問と、其の上司に礼装が似合いすぎているせいだ。


何時もと同じようで、全然違う。


如何にも大人っぽい雰囲気を纏った彼は、何時もよりも稍色っぽく見えてしまう。



「…に、似合ってるじゃねェか。」



漸との思いで彼の口から振り絞られた言葉は、


何処か舞い上がってる私の頬を赤く染めるには十分すぎて。



『あっ、ありがとう…ございます』



「おう。…早く行くぞ。」



互いに急かすようにして空気を部屋ごと断ち切って外へ出る。


そうして、ぎこちなく、何度も乗せて頂いた高級車に乗り込む。


何度も、こうして運転席と助手席で二人肩を並べる機会なんて何回も、数え切れないほどあったのに。


あれもこれも、中也さんのせいだ。


…あんな告白紛いの事なんて云われたら、意識しないなんてことは出来ない。


そんな選択肢、生憎どこにもないんだよ。



＊ーーーーーーーーーーーーーーーーーー＊

はい！


一旦此処らへんで、中也さんのターンを


切ります！…多分。


長いようで、彼が出ている話数が意外と


少ない事に今気付きました(((

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