【文スト】恋と帽子と包帯と。

15*少女と首領。 ページ15

『し、失礼します！…わっ、エリス、お待たせ。』



「A！待ってたわ！」



恐る恐る首領室の扉を開ければ、


突進するくらいの勢いでエリス嬢が飛んできて、私に抱きつく。


其の勢いで少し後ろによろけそうになるけど、すぐに体制を立て直す。


お相手に来るたびにこんな感じだけれど、今だに不慣れなのは私の警戒心の強さからだろうか。


仕事柄、余り気を抜いてられる時間はない。


其の上、首領からの呼び出しとなれば、尚更警戒が必要だし…


私たちはポートマフィア。何時身内に首を掻き切られるかも判らない、


まさに弱肉強食な黒社会に生きる、ハイエナのような存在。


死肉は漁らず、自ら狩る。


先手必勝の考えと共に生きる首領の前で余計な事をするなんて言語道断で。


本当だったらエリス嬢を呼び捨てにする事も憚られるけれど、


彼女の言葉は首領に等しい権限を持つのだから、仕方がない。



「あのね、今日は見せたいものがあるの！ほら、こっちよ！」



戸惑いながらも、手を引かれるが儘に血のように赤いカーテンの裏を潜り抜け、


何時も彼女が遊んでいる部屋へと連れて来られる。


部屋に着くなりエリスはパッと手を離して、


小走りでクローゼットに近寄り、其の扉を開ける。


小さな彼女は少し背伸びをして、其処から一着の綺麗な淡いピンクの礼装(ドレス)を取り出す。


其れは彼女にはまだ大きいようで、持ち上げるも


若干裾を引きずりながら此方へ持ってきて、私にずいっと差し出した。



『…？』



「莫迦ね！A。此れは貴女のよ。今度チューヤと招宴(パーティー)に行くんでしょう？


だから、リンタローにAの洋服を買ってって頼んだのよ！」



よく状況を飲み込めないで、ぽかんと間抜け面をしているであろう私に、


だから受け取って、と、例えるなら絵に描いた天使のような笑顔で礼装を差し出して呉れる。


けど…



『いやいやいや！頂けないよそんなの！エリスが大きくなってから着た方が…』



流石に彼女の願いでも、此れはかなり戴けない案件である。


エリスや首領から何かを貰うというのは、


非常に光栄な事であると同時に、最も恐るべき事なのだから。


然し、首領とエリスvs私の押し問答では勝てるはずもなく、


最終的には上手く云いくるめられる形で、綺麗な礼装を受け取った。


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おれをさんが描いてくださりました…！

可愛らしい絵、感謝です！！

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